1月6日午前10時から石垣市磯辺のJA磯辺出荷場で令和5年JAおきなわ八重山地区園芸協議会初荷式が開催された。
コロナ禍を配慮して参加者を限定しての開催で、会場には60人前後の関係者が集い、新年初の出荷を祝っていた。
農産物の出荷は、島の自然を活用した農家の努力の賜物。農家が育み、生み出した島産品が消費地に運ばれるもの。農家には見届けたい光景ながら、この日もコロナ禍で制限された出荷式となっていた。出席者は約60人。
式典で美里清矩八重山地区園芸協議会会長が挨拶に立ち、コロナ禍、ウクライナ、円安で、農業に必要な肥料、農薬、その他の園芸資材が高騰したことで、大変な年になったことを述べ、そんな中でも明るい話題があったことを紹介。ゴーヤ部会の全員が昨年10月にエコファーマーの認定を受けたことを、気持ちを込めて発表していた。
万歳三唱と共に、初荷のトラックを見送って、初荷式は大勢の拍手で盛り上がっていた。
この日はOAS航空でのゴーヤ200キロ、インゲン15キロの計215キロと、少ない出荷数量となったが、これから沖縄本島や本土市場のセリのタイミングに合わせて、続々出荷が予定されている。心意気を示すように、大型トレーラー3台を用意し、景気づけにコンテナを運ぶ演出をしながら、この日の初出荷を関係者で大いに祝っていた。
式典で米盛充紀JA八重山地区営農振興センター長は、令和5年度の園芸品目出荷計画を発表。オクラ100トン、ゴーヤー50トン、インゲン5トン、カボチャ130トン(石垣・西表)、パイン900トン、マンゴー8トン(2万玉)、野菜類355トン、花卉5万本とのこと。
ちなみに、昨年度との比較をすると、各出荷数量はオクラ106トン、ゴーヤー40トン、インゲン2・4トン、カボチャ110トン、パイン900トン、マンゴー4・8トンとのこと。インゲンが2倍に伸びる模様。
米盛センター長は、「農家の所得向上に向け、農家との連携を深め、生産技術の向上と安定出荷を実現し、品質こだわった生産拡大の強化に努めたい。」と述べていた。
この冬の時期の八重山の農業は、30年以前より、本土・本州で農産物が収穫できない端境期に本土需要を見込んでの農産物の出荷が、ある種の特長だった時期があった。
かつては里芋などが石垣島北部地区で多く生産されたもの。今は、インゲン、オクラといったフライト農業の代名詞となる、重量がかからないが、素早く新鮮な形で出荷できる野菜が、雪に閉ざされるエリアが広がる本土へ出荷され重宝がられた。
ただ、農業は全般的に外国産との価格競争もあり、これまでよりも厳しくなりつつあるのも実情。商社の活躍というのは語弊があるが、日本の買える安価な農産物の生産を、発掘している傾向は、誰が見ても否めないはず。
ただ、日本の農業は国産品としての安心できる農産物の側面で、日本の消費者に支えられているが、農業の国際競争は、昔から農業に降りかかる大問題。最近は、防衛関係で農産物の自給率は低迷が焦点になっている。
このところのコロナ禍、ウクライナでの戦争の影響、ドルの利上げからはじまった円安による輸入品の高騰。いわばエネルギー高騰による運送費や、資材費の値上げなど、経済状況は農産物に限らず、厳しい局面におかれている。また、各地で資材が揃わず、生産が遅れる現象がおこってもいる。そこを上手にクリアしながら、コロナ禍の厳しい景気に耐えながらの経営が、日本全体の経済状況。コロナ禍の厳しさを、どう乗り越えるか、創意工夫が様々な局面で必要となっている。
円安になれば、海外の品は高くなる。そうなれば国産品に目がいかなければおかしいはずが、いかない。農産物では、中国への輸出で高級品的農産物が国産品のイメージとなり、それたは国内消費者には回らない。国内需要が盛り上がっても、数量は突然に増やせないために、値段は高騰。キャベツが未だに300円のままで、コロナ禍以前の値段さえ忘れてしまいそうな状況といえる。
昨年の世界中での干ばつ、山火事、洪水など、天災が極めて厳しく、またアフリカの砂嵐の被害もあった。食料不足の厳しさはやがて回ってきそうな雲行き。
八重山での農業生産の大切さもとともに、災害対応で各家庭での備蓄も急ぐ必要も生まれている。農業資材もパインなどの大きな生産物関係のものは早めに確保することが、望まれる。役所も、南海トラフや首都圏直下型の災害時に、島外からの農産物流入が止まる可能性を、どう察知するか。
非常時の情報取得とその判断方法を、あらかじめ考えておく必要がある。市役所は国防を基点に、農業生産への投資の必須さを国に迫ることも可能では。
県庁より400キロ離れた、海で隔たった国境の八重山であることを、忘れてはいけない。
(流杉一行)