石垣やいま村でカンムリワシの放鳥

 特別天然記念物のカンムリワシの放鳥が9月9日午前9時から石垣島名蔵の石垣やいま村で行われた。

 7日に崎枝に近い名蔵湾のそばで、車にカンムリワシが接触。動かなくなっているカンムリワシを接触した運転手が保護して動物病院へ搬送。素早い対応で治療後の治癒が早く、石垣やいま村で預かって、元気になったことからこの日放鳥となった。

 石垣やいま村の渡久山恵さんが、今回保護されたカンムリワシを目隠し状態でゲージから運び出し、広い野原で目隠しを外した。環境省石垣自然保護官事務所が付けた「N」の一文字がある足環を披露して、さっそく放鳥。まず地面に置くと、カンムリワシは隠れているかにうずくまり、動かなくなる。渡久山さんが近づくと、不意を突いて飛び上がり低く飛び去った。

 カンムリワシの今年に入っての石垣島における保護数は9羽。その内の7羽が交通事故で、6羽が死亡。唯一放鳥に至ったのが今回のカンムリワシ。西表島でも1羽が保護されている。

 この日、環境省の藤田和也自然保護官は「路上でカンムリワシがスピードを出さないよう配慮を願いたい」とドライバーへ要望を述べていた。

 この日の放鳥個体は、残念なことに、飛んだ先にはすでにカラスがいて、即座に追い回されていた。野生の運命としか言いようがないこの放鳥は、車に被害、弱ればカラスと、挟み撃ちの状況で、危ぶまれる生存そのままを物語っている。人間が特別天然記念物と指定しても、カラスひとつ追い払えない中では、保護活動をしているといえても、果たして誰にその成果を言えるのか。ただ、かといってどうもできないのが現実。

 昨今、移入種の大量繁殖で問題になっているオオヒキガエルが、すでにカンムリワシの餌として捕食対象になっており、外来種として駆除対象の種が、カンムリワシの食料と化している。おかげでカンムリワシの猟の能力が落ちているのではないかと、いぶかる声もある。もしオオヒキガエルを島内で全駆除したなら、カンムリワシの食料はどうなるか。そういう心配さえ発生しかねない状況だ。最南端の亜熱帯域にカンムリワシとイリオモテヤマネコという2種の特別天然記念物を指定し、保護活動していることになっている環境省だが、国からの予算や人の手からすると、どこも「特別」に値するものがうかがえない。

 相変わらずのボランティア頼みで、省利権には力が入っても、大自然相手では、大自然が何かしてくれるわけもなく、首都圏世論が動かない限り、パスされる。

(流杉一行)

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