大久英助小浜公民館長は小浜島生まれの70歳。小浜小中学校を卒業後島を出て、沖縄本島の沖縄工業高校を卒業ののち琉球警察(現沖縄県警)に就職。警察本部、那覇、名護、石川、うるまなど沖縄本島を中心に勤務。
八重山署勤務は、1998年(平成10)から2年間。その間、交通安全指導を徹底し、1年間死亡事故ゼロを達成、新栄公園に記念植樹をしたことが忘れられない思い出だという。
2007年(平成19)退職。民間会社に3年、交通安全協会連合会で交通安全講話を3年、2013年(平成25)に小浜島に帰ってきた。翌年公民館副館長、2015年から現在まで公民館長をつとめている。
●久しぶりの島での暮らしはどうですか。
私は仕事が仕事で、これまで島のことをほとんどしてこなかったので、島に帰ったら島のためにやりたいと思っていました。
島には昔から「村オンデール(村の役職)、神オンデール(神事の役職)は断るなよ」という教えがありますので、「はい」と承って村の仕事をやらしてもらっています。
いま島の中核になっているのは私たち団塊の世代。同じ年代の人がいっぱい帰ってきて協力してくれるので非常にやり易いですね。他の島から見ると羨ましいらしいですよ。
このあいだ老人会のゲートボール大会に行った時に、他の島は80代の人たちが多い。僕らはほとんど70歳ちょっとでしょ。「小浜は素晴らしいなあ、若い青年(!)が老人会に入っている」と羨ましがられました。
この島には「ナウルユ(稔る世)、ミルクユ(弥勒世)を迎える」というのがあって、農業をしないとナウルユのことはわからない。それで、まずはできる範囲でいいので農業をということでキビ作をしています。
僕たちの小さい頃は、農業では飯は食っていけないから頭を磨きなさいとよく言われました。これが教えだった。だから公務員が意外と多いんですが、農業はしかし楽しみですよ。
植えて芽が出る楽しみがあるし、肥料を入れたらバーっと成長する楽しみがあるし、収穫の時の楽しみはなんとも言えないですよね。倒す難儀があるけど、お金が入ってくる楽しみもあるしね。しかし近ごろは公民館長の仕事が忙しくてなかなか畑に行くことができないですね。
●小浜のいいところ、素晴らしいところを教えてください。
年寄りを大切にする、敬う、これがすごい。ほんとにびっくりするくらいですよ。例えばお祝いや法事があるでしょ、年功序列というか、年寄りを上座に生年月日順にピシャッと座るんです。
お宮でも座る位置が決まっています。結願祭でも、還暦以上でないとこっち(舞台の前)に来れないわけ。ウヤンキ(先輩たち)は正面から観るけど、60歳以下は、演じる人のお尻しか見えない。みんなわきまえてやっていますね。
昔から「シージャ(先輩)ぬ言葉やウヤ(親)ぬ言葉、ウヤ(親)ぬ言葉やカン(神)ぬ言葉」とあるでしょ。それをずーっと耳にたこができるくらい教えられてきているから、身に付いているわけですよ。
先輩に道で会ったらちゃんと挨拶するし、封建的というかもしれないけど、誰が先輩か後輩かわからないような時代に、こういう風習は僕は美徳だと思っています。
着物にしても、今日はお祝いだからクンズン、法事だからこの着物と決まっている。主催者が挨拶して初めて料理に箸をつける。これが島の常識。こんなことをずーっと継承していければいいなと思っています。
組織、役割にしても制度がピシャッとしている。公民館長がいて副公民館長がいる。理事幹事がいる。その下にムラナカス(村中手)がいて、彼らが村の行事を仕切ってやるんですよ。
結願祭の1週間前には銅鑼が鳴るから、そしたら、ナカスがちゃんと家を借りて、みんなを集めて踊りをさせ、結願祭まで立派にもっていく。
お盆の1週間前にはナンガソーラ(七夕)がある。ナカスがニンブチャーニンズ(念仏踊りをやる人)を集めて練習させたり、子どもたちの踊りの練習をさせたりして、これでピシャーッと行事ができる。1週間で自分たちが築いてきた伝統文化をちゃんと教えていく。
ムラナカスの下には、キョンギンナカス(狂言中手)とか、ブンドゥルナカス(踊り中手)とかがいて、組織がキレイにできている。これが小浜の特徴であるし、素晴らしいところですね。
また、小浜島がカフヌシマ(果報の島)と言われるのは、竹富や黒島などと比べて水が豊富で自然が豊かだからですね。水が豊富だから稲作ができた。
海はキレイだし、魚はもちろん、ムンツァン(飯蛸)、アーサ、スヌイ(もずく)など海の幸は豊かだし、ナーマ(キノコの一種=梅雨どきにイナビカリがぴかぴかするころ、これが生えてくるんですよ。白蟻の巣の上に生えるといいますね。一晩でダメになるらしい)を湯掻いて食べたり、お盆の時期にはマーダケ(真竹)のタケノコを食べる。
●島の課題と今後の展望を。
来年2月に完成予定の公民館建設のための募金活動を現在やっています。私は期成会長もやっているものですから、石垣に行ったり那覇に行ったり、郷友会や企業回りで忙しいですよ。
建物は役場がつくってくれるんですが、内部備品はこちらで揃えなければいけませんので、年内に1500万円を目標に募金活動をしています。
もうひとつの課題は、住人の把握ですね。現在村内で約200世帯ありますが、リゾートホテルなどに働きに来ている人たちがどれくらいいるかわからないんですよね。いまは(船の)離島割引があるのでほとんどの人が住民登録しているようですが、公民館ではその把握ができていませんね(竹富町役場調べでは、3月現在394世帯592人)。
島の今後については、観光客にどんどん来てもらって小浜を楽しんでもらいたいなと思います。海も浜もキレイだし、海のレジャーもいいし、魚は釣れるし美味しいし、いろいろ楽しめると思いますよ。
ただ、空き缶をポイ捨てするのは止めてもらいたいですね。公民館で町道の清掃をするんですが、畑の畔道には空き缶がいっぱいですよ。自動販売機と一緒にゴミ箱を設置する条例をつくってほしいと思いますね。
それと、ちょっと心配なのは、お年寄りが多い島ですから、10年後どうなるか。子どもが帰って来なければ空き家が増える可能性がある。
いや、こっち(小浜)は仕事はいっぱいあるんですよ。ホテルもあるし、技術があれば建築関係も、ユンボをつかったり、いろいろあるみたいですからいらぬ心配かもしれませんが。
●個人的な楽しみは何ですか。
趣味は釣り。10月からはタマン釣りです。はっさ、90センチのタマンがばんばんあがる。大潮の夕方、大潮から中潮に変わる頃がちょうどいい。薄暗くなった頃にガーラが入ってきて、それからタマンが入ってくるんですよ。
相棒の老人会長と一緒に、アカヤやトゥマールの浜で、1時間から1時間半くらい。10何匹釣れることもありますよ。夜はこれが楽しみ。
菊づくりも趣味ですが、今は公民館長の仕事が忙しくて、なかなかゆっくり楽しむ余裕がないですね。