八重山民話

かくれ蓑

 ある部落に、とても働きもので礼儀正しい男がいました。その男は毎日、朝畑に出る時に畑の近くにある大きな木に向かって「おはようございます」とあいさつをします。お昼になると「ちょっと休ませていただきますよ」とあいさつしま ...

人間のはじまり

 昔々、沖縄の島々にまだ人間が住んでいなかった頃のおはなし。   沖縄の美しい海の中に、天の神様がたくさんの島をつくりました。その島々に、地の神様をつかわせて、花や木を植えさせました。だから美しい海に浮かぶ島々はとて ...

不思議な薬

 昔あるところに、とても仲の悪い姑と嫁がいました。姑は毎日、朝から晩まで、嫁に文句ばかりを言い続けます。すっかり弱りはててしまった嫁は思いあまって、この姑を亡きものにしようと、ひとりの医者に相談して、毒薬をつくっても ...

ニライカナイ

 昔々、私たちの島にはなにもありませんでした。それを眺めていた天の神様が、ニライカナイの神様に言いつけて、いろいろなものの種をまくことにしました。そして、その種から生まれてくるものの世話をするために、人間を住まわせる ...

お化けうなぎ

 昔、ある村で牛や山羊が次々といなくなるということがありました。そこで、村人たちは毎晩、夜番を出して、見張りをすることにしました。  そんなある夜、村外れにある溜池の中から、何か大きなものがはい出して来て、寝ている牛 ...

蛇になった怠け者

 昔、母ひとり、子ひとりの家族がいました。母親は毎日、朝から晩まで畑仕事や糸紡ぎをして働きましたが、息子はいつも家の中や近くの木陰でごろごろして少しも働こうとしませんでした。  そして、とうとう母親が死んだときも、近 ...

ハーリーのはじまり その一

 昔、ある学者のところに、よくできたふたりの弟子がいました。  ひとりは先生の後を継いで学者になりました。もうひとりは役人になりました。役人になった弟子は、いつまでも自分にあれこれと意見をする先生をじゃまにして、那覇 ...

チブル(ひょうたん)からハチ

 昔、年老いた母親と一人息子の家族がありました。息子は一生懸命働いたのですが、とても貧乏でした。  それを見た神様が一粒のひょうたんの種をくれました。その種から芽を出したひょうたんのつるはどんどん伸びて、畑いっぱいに ...

ききみみ頭巾

 ある一人の男が自分の家や畑のまわりにある木や草花をとても大切にして、切ったり折り取ったりしないようにしていました。そんな木や草花は、日陰を作ってくれたり美しい花を咲かせて人を楽しませてくれているのですから。  ある ...

百姓とアッコン

 あるところに、ひとりの百姓がいました。毎日、朝から晩まで畑仕事に勢を出しています。  百姓の畑の近くに一本の大きなアッコンが(アコウ)の木がありました。百姓は朝、畑に入る前にこのアッコンのところに来て、「お早うござ ...

切りたおされた神木

 昔、ある部落のはずれに村人が神様が宿る木として大切にしている大きな木がありました。その頃、王府では、宮殿の建て直しで、あちこち柱になる木を探していて、この部落の大木も切り出すことにしました。  村人が「これは自分た ...

クスクェー!!

 夜、赤ん坊がくしゃみをします。 「くしゅん」 するとオバァーが小さな声で「クスクェー」といいます。 「くしゅん」……「クスクェー」。  それにはこんな話があります。  ある日の夕方、ひとりのお百姓さんが畑からの帰り ...

人頭税と島分けの頃

 首里王府は貢献物の増産のため、八重山の島々から、田畑の作れる西表島と石垣島に島人を移住させ、土地を拓かせることをしました。各島々の人は家族ばらばらに引き離され、若い恋人たちも有無を言わせずに引き離されました。そんな ...

火正月(ピーションガツ)

 これは平久保に伝わるお話です。  昔々、ある大晦日の夜、一人のみすぼらしい姿の旅人が平久保の部落にやって来て、一夜の宿を頼みましたが、どこの家でも「とんでもない」とことわられてしまいました。部落のはずれのとてもまず ...

黄金の花

 ある正直者の老夫婦がいました。畑仕事を終わっての帰り道、なんだか遠くの草の中でキラキラと光るものがありました。近づいてみると、それは黄金色に光る一本の花でした。二人はそれを家に持ってかえろうかと話しあっていましたが ...

かたわづきの舟

 昔、竹富島に住んでいた兄と妹が浜辺で遊んでいて、不思議な木の実がプカプカと波にゆられているのを見つけました。その実をじっと見ていた兄は、大きな木の丸太を探し出して来て、その実のかたちに似せたものを作りました。  そ ...

蛇のムコ入り

ある娘のところに、毎晩見知らぬ男がしのんで来ました。昔々には結婚前に「足入れ婚」というのがあって、それで両方に問題がなければ、正式に結婚をするという風習があったのです。  でも、よく見るとどこか様子がおかしい。そこで ...

御神崎のチブルー石

昔、名蔵に姉と弟がいた。姉はとても信心深くて働きものでしたが、弟はどうしようもなく怠けもので朝から酒を飲んでぶらぶらしてくらしていました。  姉はいつもいつもそんな弟に、心を入れかえて、祖霊をうやまい、先祖が残してく ...

ハイカ星

昔、八重山の黒島に一人の娘がいました。不思議なことにその娘には乳が四つありました。親も娘もとても恥しいと思ってずっとかくしていたのですが、年頃になるととても美しい娘に育ったので、いろいろな人が嫁に欲しいと娘のところに ...

百姓とガジュマル

ある百姓の畑の近くに、一本のガジュマルの樹がありました。 百姓は朝、畑に来ると、一番先にガジュマルの樹のところに行って「おはようございます。今日も一日元気で働けますように」とあいさつをします。お昼は樹の下で「今日も涼 ...

真謝井戸(マジャンガー)

波照間から白保にいらっしゃったのはよう、オオドマリ家、ヨネモリ家、ナカシマ家とかね、ヤラブ家とかね、いろいろな家はね、波照間からいらっしゃってんですよ。ヨネモリさんの祖先も波照間です。 白保の波照間御嶽はね、自分らは ...

ものいう牛(下)

 そいじゃあ、あの牛に水を飲ましたものが行ってね、牛を連れて来たらよう、この飼い主はね、この牛のいうか、やんのに、あんたこれ、うそいうこといったらよう、あのヌシが、 「いやあ、必ずものいうんだから」 ということで、牛 ...

ものいう牛(上)

 沖縄の話ではね、この国頭からよ、那覇に首里によ、奉公しによ、来て、首里の王さまのところでね、働いてよ。みんなお正月だから、家に帰って行って、またお正月をすましてね、また来るようにといって、詰めて貰ったらしい。それが ...

大綱引きの由来

 大綱引き、これはですねえ、申し上げますがねえ、今はね、文化が進歩してね、この病害虫、この虫なんかも駆除する農薬もあるでしょう。昔はそういうものがない時代だからよう、今ごろ考えるとですねえ、本当に世の中の進歩ってあり ...

サルのナマギモ

むかしですね、海の王様が病気して、非常に困ってね、いろいろな海の動物、タコとかサカナとかカイとか、あれらがね、「どうすれば海の王様が助かるか」ということでね、心配しておったところが、神様が「サルのナマギモをとってきて ...

大晦日の客 | 熊谷溢夫の昔話#7

もう明日は正月。 どこの家でも、ごちそうを作ったり、正月飾りを作ったりで、おとなたちは大忙し。 そこへ、みすぼらしい身なりの旅人がやって来て、一夜の宿を乞いましたが、どの家でも、それどころじゃないとことわられてしまい ...

ミルクとシャカ

 むかしね、ミルク神とね、オシャカがね、二人がね、争ってよ。このミルクの神さまはね、住民のためによ、非常に尽くしたんだから、ミルクの神さまはね、非常に尊敬しておりましたよ。  オシャカはね、あの人はミルクの神を倒して ...

カジマヤー | 熊谷溢夫の昔話#6

沖縄では、 人が97才になると、 カジマヤーといってお祝いをします。 人間、97才くらいまでも生きると 子どもに還えるといいますから、 子どもの頃よく遊んだ風車をもって、 もう一度生まれ変わろうということだったり、 ...

鞴(フイゴ)祭り | 熊谷溢夫の昔話#5

昔、昔、自然や生活の中には、色々な神様がいました。 火を燃やし、石を溶かすと、元の石よりもっともっとかたい鉄ができました。 鉄を持った人たちは、それまでよりずっと豊かな生き方ができるようになりました。 鉄を作り、それ ...

カエルとカニのかけくらべ | 熊谷溢夫の昔話#4

むかし、月夜の晩に、カエルとカニがかけくらべをした。 はじめはカニの背中にカエルが乗って走った。 カニは砂浜をサーッと走った。 「お前、なかなか速いなー!!」 次にカエルの背中にカニが乗った。 カエルはカニに言った。 ...