スペシャル対談 青井志津 × 黒川洋一 ~タラソテラピーの可能性~

●青井志津(あおい しず
940年富山県生まれ。愛知県立旭が丘高校卒。1991年より、尋常乾癬の療養に石垣島に移住。著書に「『抱擁家族』と三島由紀夫・珊瑚礁の島」(新風舎)、「石垣島スクーター遊々記」(四谷ラウンド)、「石垣島、死者の正月」(四谷ラウンド)。

●黒川洋一(くろかわ よういち)
昭和13年生まれ。八重高9期、昭和42年東北大学大学院工学研究科博士課程修了、平成13年3月同研究科(材料化学・バイオ系専攻)教授退官、沖縄海洋療法研究開発組合理事、宮城沖縄県人会会長、やいま・みちのくの会会長。

青井さんの方からタラソテラピーに出会ったことを聞きたいんですけど。

青井 志津(以下、青井)
私は石垣に持病の尋常性乾癬症の治療で転地してきたんですが、始めは紫外線療法ということで海辺で日光浴して海につかることで、治療効果がありました。3年前に(株)「石垣の塩」のテストケースとして2倍濃度海水のプールが公開されました。それを体験しましたらみるみる好転しまして、これは治療に使えると思ったんです。今年になって、フランスで定着している海洋療養所タラソテラピーをつくるという話が持ち上がりました。それで是非、それに付随して2倍濃度海水を使用した療養施設をつくって欲しいとお願いしたわけです。

黒川 洋一(以下、黒川)
世界でもタラソテラピーは注目されています。フランスの自転車競技のツールドフランスの宿泊所にも利用され、選手の筋肉の疲労回復に効果を上げていますし、青井さんのような皮膚病、リュウマチなどへの効果も立証されています。もちろん美容・エステにも力を入れていますが、ドイツで本格的な医療としてのタラソテラピーが行われている例があります。

青井
最近は世界中で海水が汚染されていくので、海洋療養という名目で八重山の海を守れないかと思っているんです。オゾンホールからの害が少ないということでは、日本の中では八重山が一番ですから、紫外線療法が効果のある尋常性乾癬症の療養所施設をつくるのに、一番適している場所ということになります。それに海洋治療に一番大事な、汚染されていないミネラルバランスに優れた海ということでは、世界でも八重山しか残されていない状況ですので、治療場の確保という観点からも海を守るシステムを早急につくってほしいです。

医療的なものを取り入れたタラソテラピーの施設が八重山にあっていいと思います。

 
黒川 
医療的なものを取り入れたタラソテラピーの施設が八重山にあっていいと思います。日本の最南端という立地条件もありますし、私は東北大学を退職して母親の看護のために石垣島に帰ってきましたが、東北では長い冬で紫外線不足とミネラル不足から健康を害することが多いものですから、石垣島に湯治場のような安価で滞在できる施設があったらなあ、と東北の医師に言われていました。青井さんの考えておられる施設はその観点からも必要な物だと思います。

青井
黒川先生は真水を海水から取る浸透膜の研究で成果を上げていらっしゃいますが、海水のミネラルは地球上の全てのミネラルを含んでいるわけですし、まだまだ解明されていませんから浸透膜で処理しきれないミネラルが含まれているのかもしれませんね。療養のための長期滞在となると気分転換のための娯楽も必要となりますし、観光のソフトが揃っている八重山は向いていると思います。地元の人も利用できる施設であってほしいのですが、一番切実なのは増え続けているアトピーや尋常性乾癬症の本土の人たちなんです。私もそうですがステロイドでの副作用やリバウンドで治療法もなく苦しんでいる人がいっぱいいます。もちろん、リュウマチや皮膚・骨・筋肉関係の病気の方々もそうですが、治療にはタラソテラピーは、とても効果があると言われているのに、海に囲まれた日本で発展しなかったのは不思議な気がします。私の郷里の富山県では子供は必ず夏場に海水浴に連れて行きました。汗疹が治るし、冬場風邪を引かないという予防医学の知識が庶民にありましたから。石垣島でも昔は夕方海に浸かり、海水で豆腐を作り、体調を崩すと苦汁を飲んだといいます。海産物を食するだけでなく海のミネラルバランスを生物の知恵として自然に取り入れていたように思います。沖縄の長寿と健康の元は海のミネラルバランスを食してきたためだったのだと感心しています。ですから最近はクーラーの部屋で生活して塩化ナトリウム塩で味付けされた食品ばかり食する若い世代の健康が害され始めていますよね。アトピーに至っては10歳以下の子供では十人に一人の患者という統計が出ました。この美しい珊瑚礁の八重山だからできる治療があると思うんです。話はそれますがノーベル賞受賞の富山県出身の田中耕一さんは東北大学出身ですね。おめでとうございます。

黒川 
東北大は昔から材料科学では世界一の実績を誇っています。私の弟子にも将来ノーベル賞を受賞しそうなのが2、3人いますよ。嬉しい話なので話題がそれてしまいましたが、与論島の方々が中心となって鹿児島タラソ研究会が発足したんです。離島が多いですからタラソテラピーとアイランドテラピーを一緒にして、人口の減少問題とか高齢者の予防介護などに力を入れています。そこと比べれば八重山の方が交通アクセスもいいです。景観も非常にいい、そして島がリーフに囲まれているので、潮風があがってマイナスイオン効果があります。食の文化もちゃんとあります。

青井
食べ物も本土から来た方でもあまり違和感を感じないと思います。食事が合わないと長期滞在になるとストレスになりますから。。

黒川 
立地条件は日本で一番いいと思います。八重山は少し遠慮深いと思います。

治したいと思うときに、いつでも行けて滞在できる施設をぜひつくっていただきたい

 
青井
きれいな海を実体験してもらって、なおかつ健康になる、そのためのタラソテラピー施設なんです。水道水は、皮膚病の人には刺激になって悪化するんです。2倍濃度海水は海水から水を取る副産物です。その水を塩分を取る上がり湯に利用できれば最高だと思います。アトピーを治すために現在の石垣では民間の施設しかありません。どうしても割高で治療の継続ができないと思います。治したいと思うときに、いつでも行けて滞在できる施設をぜひ、「癒しの島、命輝く石垣市」につくっていただきたい。

黒川 
八重山でつくればユニークなものになると思います。今までの日本にある施設だと美容効果・エステ中心のものだったんです。健康増進・医療関係のものを中心にした施設にするとおもしろいと思います。沖縄の特色は、海洋関係ですから、海洋治療研究所なんかも一つあってもいいと思います。

青井
海洋治療に対する研究テーマを持ったお医者さんが、自分の患者さんを八重山に連れてきてその病気の研究をすることができるようにすることができるシステムを将来的には考えてもらいたいものです。

黒川 
八重山の海のために研究をするようなことなら、やる人はいると思います。患者さんたちからは「治療したくても治療できない」という声は多いんですか。

青井
尋常性乾癬症は昔から北欧に多く、紫外線不足が原因と言われていますが、原因が分からないから治療法がないんです。薬は対処的な物しか有りません。ですから副作用を起こしてしまいます。私が今、「2倍濃度海水」に執着しているのは、副作用がないだけでなく、体調が良くなって、たとえば3年間続けていましたら体脂肪も減少しましたし、腰痛も無くなりました。花粉症もなおっています。ステロイド無しで管理できます。それに日光浴をすると治癒していきます。

黒川 
医療関係を強調することで民間も加わる。タラソテラピーとアイランドテラピーに最も適しているのは八重山であるということのアピールが、もっと必要です。

青井
そのことで八重山の海も守られる。

黒川 
今、中国の山東省でも動き出していますし、韓国の済州島でも動きがあります。
そこと比べても八重山の海の方がいいです。

この記事をシェアする