石垣市公設市場の毎日

石垣市の公設市場に行ったことがありますか?
実は、地元の人でも、若い人は行ったこともないという人も多いこの場所。
ここは明治時代から続く、島の台所。
時代を超え、島の人たちのお腹を満たしてきた市場をちょっと覗いてみよう。

島の台所 石垣市公設市場-


 石垣市の中心街、ユーグレナモール内にある石垣市公設市場。島の台所の市場は古くから市民に親しまれてきた。南国ならではの色とりどりの野菜やフルーツ、魚、お肉のかたまりが並ぶ。それをすぐそばでさばいたり、袋につめたりするお店の方々。公設市場には昔ながらの光景が残っている。
 地元の、昔からの根強いお客さんも多いが、大型スーパーができてからは、地元客の足も徐々に遠のいていき、今では、観光客、そして、離島のお客さんがメインとなっている。船積みも行っているので、離島の売店や民宿から、まとまった注文が入る。
 八重山で唯一の市場は、明治32年に現在の八重山郵便局南側に魚市場として設けられた。5年後の37年に、現在地へ移転し、大正11年に村営の公共施設として整備された。1日の中でも特に夕方から夜にかけて最も賑わい、活気をみせていたという。外には、イモなどが積み上げられたバーキが数多く並んでいた。近くのそば屋も、買い物に訪れた人たちでいつも賑わっていたという。
 現在の公設市場は、地階は精肉、鮮魚などの生鮮食品、階段を上って1階は、島のお土産品がそろう石垣市特産品販売センターと衣料品店、2階はいちば食堂、そしてあやぱにキッズ保育園などとなっている。生鮮食品のフロアには、現在10店舗が入居している。

昭和の公設市場

▼昭和11年頃、石垣町の野菜市場。現在の公設市場の場所。河村只雄氏・撮影、河村望氏・提供。『八重山写真帖上巻』(石垣市史編集課編)所収

▼現在のユーグレナモールの通り。昭和36年8月撮影。杉本尚次氏・撮影、提供。『八重山写真帖下巻』(石垣市史編集課編)所収

▼昭和34年8月の公設市場。久地岡榛雄氏・撮影、提供。『八重山写真帖下巻』(石垣市史編集課編)所収

モール


 建物外、モールの大きい通りで、売り物をきれいに並べ店頭に立つのは5人のベテランの方々。島の野菜、フルーツ、加工品、お土産ものなどを販売している。朝6時台から売り物を並べ始める。みなさん取材期間中は、接客の傍らに、今が時期の島らっきょうの皮むきに精を出していた。

 モール内を歩く人たちに「いらっしゃーい」と声をかける。珍しいものを目にした観光客から質問をされたら、「じーまみ豆腐もおいしいよー」とおすすめも忘れない。顔見知りのお客さんや農家さん、納品業者さんがくる度にユンタクし、とてものんびりした光景。毎週月曜、木曜は台湾からの大きなクルーズ船が石垣に寄港するため、モール内は台湾人のお客さんでいっぱいになり、市場も大忙し。みなさん身振り手振りでやりとりをする。中には片言の中国語を覚えてコミュニケーションをとっている人も。

玉城ミートショップ


 玉城ミートショップでは、JAによって最高ランクの『上』に格付けされた豚の解体が行われていた。この日は豚が頭のまま登場し、通りかかる観光客を驚かせていた。沖縄では「泣き声以外はすべて食べる」と言われる豚。まさにその通り、「ここは豚トロ、これがタン」と説明してくれながら、なめらかな包丁さばきで次々と切り分けられていく。すぐさま、顔の皮、チラガーがお目見えした。

 

久場鮮魚店


 久場鮮魚店では、トシ子さんがまな板の上でキハダマグロをお刺身用に切り分けていた。鮮魚店の店頭には、時期のモズク、マグロのほか、たくさんの魚介類が並んでいる。離島から大きな注文が入った時は船便の時間もあるので、急いで支度をする。港まで運ぶのはほかのお店の人たちが手伝う。市場の人たちは大家族のよう。

金城冷凍食品


 公設市場が1年で一番忙しくなるのは、お盆とお正月前。料理を大量に準備する人たちが、お肉やお魚を求めてやってくる。石垣牛はお歳暮やお中元にも大人気。お肉屋さんは、「特に12月はあまり寝られない…」と話していた。
 金城冷凍食品では、オーダーを受けてからお肉のカットをする。平均で週に牛1頭半くらいの注文を受けるという。

 近年、石垣牛は人気で品薄の状態が続いている。部位によるが、注文が入っても、数週間待ちが当たり前となっている。数が少ないのは、セリにかけ本土へ出荷する繁殖農家が多く、肥育農家が少ないからだという。
 金城冷凍食品の人気商品のひとつ、石垣牛のハンバーグは、塩こしょうのみのシンプルな味付けで、石垣牛の味がしっかり味わえる。ひとつ250円のお買い得品で、1日に200〜300個ほど売れるという。店長の金城幸喜さんは、店を任されて10年となる。幸喜さんの祖父の善吉さんが店をはじめ、2代目の善幸さん、そして、幸喜さんは3代目と老舗。「石垣牛をもっともっと宣伝していきたい」と意欲的だ。

まんな鮮魚店


 まんな鮮魚店は、満名フミさんと娘さんの美佐子さん、お嫁さんの典子さんの3人で営んでいる。今の時期はモズクが最盛で、美佐子さんがモズク、大きい魚をさばくのは典子さんという役割分担となっている。
 フミさんが、この日入ってきたチヌマンをさばいていた。
フミさんの一番好きな魚を聞くと、まさに今さばいているチヌマンだそうだ。「豆腐とか白菜とかと煮て食べるのがおいしいよ」と教えてくれた。
市場へやってくるのは毎日8時くらいだが、注文が多くて忙しい時は6時頃から来る事もあるそうだ。この日も注文の電話が多く、この時は黒島へ船積みする準備をしていた。

上原精肉店


 上原精肉店では、店主の上原功さんが、テビチの爪を分厚いまな板の上で切り落としているところだった。10代前半から両親の仕事の手伝いをしてきた上原さんは、精肉業60年。「勉強よりも手伝いばっかりしてたよ」と話す。電動ノコギリよりも、自分の腕の感覚のほうが要領よく作業ができるという。沖縄本島で人気のあぐー豚も仕入れて、求めやすい価格で提供している。上原さんの息子さんふたりも一緒に店を切り盛りしている。長男の安哲さんは、「石垣牛のハンバーグや餃子はそれぞれの店でオリジナルで味が違っておいしいよ」と話す。

この記事をシェアする