製造工場に潜入

いつも飲んだり食べたりしているあの食品。どこでどうやってつくられているの? 今回は泡盛の八重泉酒造、そば麺の琉めん食品工業、石垣島地ビール工場へ潜入!

八重泉酒造


  昭和30年創業の八重泉酒造。阿香花の高台に見える『八重泉』の文字が遠くからでも一目瞭然。二代目社長の座喜味盛二さんをはじめ、30名ほどの従業員が働いている。
 創業したのは座喜味盛光さん。当時は、『座喜味酒造場』の名で八重泉の造りをはじめた。その時の工場は字石垣の2号線沿いにあった。その工場で、何度も造り直し徹底的に追求され、現在の八重泉の味ができた。今の工場に越してきたのは21年前で、この場所なのにも訳がある。風の通りがよく、すぐ後ろの前勢岳が屏風となり、冬は北風を防いでくれる。工場内は天井がとても高く、熱のこもった空気は、上に上にいく。天井近くに大きな窓があり、熱は外に出ていく。夏でもエアコンがいらないという。2階からは見晴らしがとてもよく、竹富島も見渡せる。「いい酒はいい環境から」との座喜味社長の言葉の通り。

創業当時の酒造所の前で。創業者の座喜味盛光さんと奥さんの節さん

 泡盛の材料は米と水のみ。米は、昔からタイ米がつかわれている。粘り気がなくさらさらしているため、米麹が造り易いという利点を持っている。水は地下水をつかっている。
 お米を蒸すところから泡盛造りは始まる。蒸し上がると、40℃ほどの適温を保ち、これに黒麹菌を散布して、40~50時間熟成させる。熟成させた麹を仕込みタンクに移し、水と酵母を加えて発酵させる。この間、朝夕攪拌させていく。この時に麹で生成されたクエン酸が、他の微生物の繁殖を防ぎ、雑菌をおさえる。2、3日たつと発酵が進み、モロミの表面に泡が盛り上がってくると、米粒が糖化され液状になっていく。発酵が終わったモロミを、単式蒸留機に入れて火熱で蒸留し、約2週間仕込みタンクへ。それから貯蔵タンクに移して熟成を待つ。長くおけばおくほど、まろやかで風味がよくなるという。「温度湿度で味が変わってくるし、生き物相手だから大変」と話す専務の大浜周夫さん。「お客さんからのおいしいっていう声を聞くと嬉しいね」と笑顔。

 3トンの米をつかい仕込まれたものは、一升瓶2500本分の泡盛になる。熟成してできあがった八重泉は、広い工場のラインにそって、大きなタンクから、ボトルに入り、栓をして、ラベルを貼り、箱詰めされ出荷される。機械によって工程が進められていくが、1本1本必ず人の手でさわり、目で見て確認される。商品は速くてその翌日には島内で店頭に並ぶ。今や県内のみならず、全国に発送されていく。
 座喜味社長は、「消費者はシビア。おいしくて当たり前ですからね。製造の上ではきめ細かい心配りが必要です。麹や酵母は生きものなのでいい環境で造ると応えてくれる。お酒は造り手の心が宿ります」と話す。現在でもできた泡盛は毎回必ず試飲する。「八重泉の昔ながらの味をずっと守っていきたい」と力強く話す。

八重和泉酒造
℡/0980-83-8000 住所/石垣市石垣1834 営/9:00~16:00 休/土日

琉めん食品工業


 良集落の北にある琉めん食品では、「石垣そば」の麺をつくっている。オリジナルの小麦粉だけの麺のほか、ゴーヤ麺、紅イモ麺、長命草麺、イカスミ麺、中華麺、餃子の皮など様々な商品を製造、販売している。 
 工場長は宮古武次さん。8年前の創業から工場長を務めている。社長は東京在住の仲筋信夫さん。仲筋社長は東京稲城市で、沖縄そばを製造、販売している南風花食品を営んで27年になる。仲筋さんは宮良出身で、実家の屋号『ハイバナ』を当て字で南風花食品と名づけたという。年に何度か石垣に戻ってくるが、ふだんは宮古さんに任せている。「東京でつくっている自慢の麺を地元の人にも食べてもらいたかった」と話す。琉めんでは八重山そばではなく、石垣そばと銘打っているのは、「少し前までは、東京で八重山と言っても誰もわからなかった。石垣といえばわかってもらえ、石垣そばに決めた」と話す。

 製麺はまず、独自にブレンドしている粉と、塩や水とをミキサーにかけてこねる。機械をつかうが、生地の硬さを確かめるのは人の手。「柔らかすぎても、硬すぎてもだめ。湿度、温度によってまったく変わってくるので触って覚えるしかない」と宮古さんは話す。一定時間こねてまとまりが出てくると、麺帯という名のとおり1枚の長い帯状にする。それを機械で細く、食べやすい長さにカットし、茹で、扇風機で冷やし、袋につめてできあがり。扇風機の風にあてる前に、サラダ油を軽くふっている。麺がくっつくのを防ぐためと、油をつけたほうが長持ちするという。
 琉めん食品の1日は早朝からはじまる。その日の昼食時に食堂でだされる分を製造し届けるために、でき次第配達へと急ぐ。宮古さん、平久江悟士さん、宇保直さんの3人で製造し、できあがると平久江さんと宇保さんが配達、船積みに出る。石垣島内全域と、小浜島、西表島などに送っている。

 石垣そばは受注製造で、食堂やホテルに卸しているが、個人でも注文し買うことができる。丸麺と平麺があるが、人気なのは丸麺だという。宮古さんは「本当にそばが好きな人は平麺派の人が多いはず」と話す。ゴーヤ麺はサラダで、野菜と一緒にゴマドレッシングで食べるのがおすすめだそうだ。他の色つき麺は、汁そばではなく、パスタやざるそばがあうという。
 宮古さんは「うちの麺はコシがあって、ツルツルしていて、食べるのに少し時間が経ってしまってもほとんど伸びません。お客さんにおいしいって言ってもらえた時が本当に嬉しいね」と話す。取材中も電話が鳴り、注文が次から次へと入っていた。

琉めん食品工業
℡/0980-86-7663 住所/石垣市宮良358-31 販売/13:00~17:00 休/日曜
※見学は基本、小学校などの見学学習のみ。

石垣島地ビール


 『ビールなのにサプリメント』のキャッチフレーズでお馴染み、石垣島地ビール。設立は日本でビールの醸造が規制緩和されて間もない平成6年。当時地ビール工場は全国的にも少なく、石垣島地ビールはその先駆けといえる存在だった。社長であり工場長でもある塩谷篤さんは当時を振り返る。「製造を始めると決めてからは機械の買い付けに4度もドイツのミュンヘンへ渡りました」。免許を取得するのも難しく、すべての申請に要した日数は3年にも及んだそうだ。「造り方も現地で伝授してもらい、酵母も貰ってきました。その酵母は今でも使用しています」と石垣島地ビールはドイツからの伝統的な味を継承している。
 製造にあたり、塩谷さんにはこだわりがあった。通常は賞味期間を長くするためにビール酵母をろ過し製造しているが、石垣島地ビールは酵母はそのまま残している。ビール酵母には食物繊維やビタミンB群、必須アミノ酸など多くの栄養が含まれており、『ビールなのにサプリメント』の秘密はそこにある。地元に合った微生物と、その風土を活かした自然の味を味わって欲しいという想いが込められている。

粉にひいた麦芽を仕込み釜に入れ、50℃のお湯でかき混ぜながら100℃に達するまでゆっくりと熱する

 地ビール造りはまず、粉ひきにかけた麦芽を仕込み釜に入れ100℃まで熱していく。熱することで麦芽のでんぷんが糖分に変わるという。糖化された液から麦汁をしぼり、殺菌とホップの苦味を引き出すために煮沸される。その後ラジエーターにより急激に冷やされ、酵母が添付される。約一週間かけて発酵され、この時点でアルコール分5%のうち4%が生成されるという。残りの1%を低温で1ヶ月発酵させると、石垣島地ビールができあがる。飲める味になるまでには仕込みから約1ヶ月と10日の期間がかかり、これより早すぎても遅すぎても味が変わってくるという。

石垣島地ビールで造っているビールは現在5種類。一番人気はヴァイツェンビール。
 スタッフの金城和江さんは「毎朝出勤したら品質チェックのためまず一杯のビールを飲みます。ビールを飲むのが仕事です」と話す。また製造の過程では苦労も多いという。台風などで停電してしまうと機械がすべて止まってしまう。そのため台風が近づいてきたときには一度製造を全てストップしなくてはならない。「地ビール製造は生き物を扱っているのと同じです」と日々の大変さも話してくれた。
 社長の塩谷さんは、実は元々ビールが大好物というわけではなかった。石垣島地ビールを造ろうと思ったきっかけは、地元の特産品を作り出したかったからという。「大好物だったら、自己満足を追求しもっと高価で手の出しにくいビール製造に進んでいたかもしれません。今後は値段も低くし地元の人たちにもっと飲んでもらえるような地ビールを造っていきたいです」とこれからの展望を聞かせてくれた。

石垣島地ビール 
℡/0980-83-0202 住所/石垣市新川2094-4 営/10:00~17:00 休/土日
※工場見学可

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