日本の西の島、与那国島。
黒潮の恵みを受けた大型回遊魚の宝庫といわれるこの島には、毎年大物のカジキを求めて多くの腕自慢が集まってくる。今年で23回を迎えた、日本最西端与那国島国際カジキ釣り大会。カジキ釣り競技以外にもその催しは多彩で、年に一度島をあげて盛り上がる与那国島の魅力がぎゅっと詰まった大会だった。
競技前夜
カジキ釣り大会の初日は競技説明会と開会式。祖納地区ではプレイベントとして闘牛大会が、久部良漁港では、地元青年会や伝統芸能保存会による与那国民俗芸能、航空自衛隊南西航空音楽隊による演奏が披露されるなど、初日から島は年に一度の大イベントに盛り上がりをみせた。
与那国島の伝統芸能は、国指定重要無形民俗文化財に指定されており、この日は舞踊や棒踊りなど多彩な演目が披露された。まず最初に披露された与那国中学校の生徒3人による『ミティ唄』は歓迎の踊り。外間守吉与那国町長と昨年のトローリングの部チャンピオンの岡田功さん、県八重山事務所の當間重美所長が、生徒3人から御餅、神酒、盃を拝受し今大会の豊漁を祈願した。祖納青年会からは『イララ六尺』、『ダング棒』、『ペラ棒』、『ティンバイナギナタ』、『ンビチ棒』の5つの棒踊りが、与那国民俗伝統芸能保存会からは『来夏節』、『与那国猫小節』のほか、旅の安全を祈願する『旅果報』が披露された。そのほかにも3月に『戸惑いの美崎町』をリリースした佐久川和美さんや、7月に『久部良大漁音頭』をリリースした米蔵一正さんがゲスト出演するなど、明日からの競技を前に会場は盛り上がり、選手たちは競技での健闘を互いに誓い合っていた。
スタートフィッシング 久部良漁港 AM7:00
与那国島は、一年を通して国内外から大物を狙う多くのアングラー(魚を釣る人)が訪れる日本屈指の漁場だ。今年で第23回目を数える与那国島国際カジキ釣り大会では、カジキ釣り以外にも、磯釣りや親子釣りなどの部門も競われる。また海底遺跡巡り体験乗船ツアーや、よなぐに馬体験乗馬などもプログラムに組み込まれており、与那国島の魅力を存分に味わえる大会となっている。この日は釣ったカジキの総重量を競うトローリングの部初日。トローリングとはルアーまたは餌を船で引っ張って釣る漁法で、選手58人を乗せた27チームの船が、早朝7時、久部良漁港から一斉に出航した。
今回、チーム『磯ハンター』の船に乗り取材させてもらった。メンバーは加藤勇樹さん、坂田基典さん、船長の竹富光秀さん。加藤さんは南山舎のスタッフであり、毎月本誌に『釣りバカ日誌』を連載している。
カジキを釣り上げるには、まずエサとなるカツオやマグロを釣ることから始まる。船長の竹富光秀さんは海上に群がるカツオドリの動きを見ながら船を走らせる。カツオドリの集まる場所に、カジキのエサとなるカツオやマグロが集まっているからだ。与那国島周辺には数箇所のパヤオ(浮き漁礁)があり、そこに集まる小魚を食べに中型魚が、その中型魚を食べに大型魚が集まってくる。パヤオ周辺でトローリングを始めるとすぐにカツオが揚がった。久部良漁港から10キロ程度しか離れていないのにも関わらず、カツオやマグロ、カジキが揚がる与那国の海を求めて世界中からアングラーが集まるというのも、現地に行ってこそはじめてわかる。
釣ったカツオをカジキのエサにしてトローリングを開始。
その後は竿を変え、カジキ釣りのトローリングを開始。船の速さは約4ノット(時速約7.2キロ)。カジキ釣りは派手なイメージがあるが、ヒットするまではひたすら待ちながら船を走らせるのみ。揺れる船の上で何時間も耐えるのは釣り好きの人にとっても過酷だ。残念ながら今回同行したチームはカジキにありつけなかったが、競技初日、久部良漁港には9本のカジキが水揚げされた。
大会結果発表
今年のカジキ釣り大会は3日間とも天候に恵まれ、競技初日に9本、2日目に10本のカジキが揚がった。サイズこそ小ぶりだったが2日間で過去最多の19本の釣果となった。トローリングの部で優勝したチームメガストライクの杉山和由さんは「私は世界中の海で大物を釣り上げていますが、与那国島の海はアングラーにとっては世界一といっても過言でないほど素晴らしい環境です。次回はグランダーといわれる450キロオーバーを狙います!」と次回への意気込みを話した。
磯釣りの部で優勝した仲嶺成八さんは「2年連続の優勝です。太陽の日差しが強くきつかったですが、ひとつの場所で粘ったおかげで今年も優勝できました」と笑顔をみせた。親子釣りの部で優勝した久部良小学校の金城勇気くんは「兄弟で参加しました。ミーバイやガーラが8、9匹釣れました!」と嬉しそうに話した。