星にロマンと夢を求め、地域に貢献
望遠鏡の使い方を説明する新崎善國さん
八重山星の会は、2000年11月22日に24人のメンバーによって設立された。現在50人あまりのメンバーが所属し、主な活動として毎月旧暦3日に「星とゆんて観望会を行っている。バンナ、前勢岳、サザンゲート公園を主な活動拠点とし、世界有数の星空を観望しながら親睦を深めている。また毎月発行している「星ぬイヤリ」という会報誌は2005年6月現在で15回を数え、季節の星座などをわかりやすく解説した内容になっている。
そして2004年3月にはNPO法人にも認定されて活動の幅を広げた。地域社会貢献活動のひとつとして昨年から「やいま子ども星空サークル」を開講した。このサークルでは少年自然の家が募集した小学校4年生~中学生までの約30人が年間11回の講習に参加。天文の様子を四季を通じて観察し、宇宙をより身近なものにするというのがねらい。6月11日の2回目の講習では星座盤や望遠鏡の使い方を習い、参加した子どもたちからは「早く夏の星空や10月下旬に地球に接近する火星を見てみたい」という声があがった。
結成5年たらずの八重山星の会だが、南の島の星まつりでは第9回ふるさとイベント大賞優秀賞受賞、石垣島天文台誘致、NPO法人認可と功績は大きい。「今まで趣味でやっていた人が集まって会ができました。これだけの活動ができるのもそれぞれが趣味として長い年月培ってきたものがあるからでは。それをこれからは地域社会に還元していきたい」と八重山星の会代表理事の通事安夫さんは話す。
(右)八重山の星について講義する通事安夫さん
「南の島の星まつり」第9回ふるさとイベント大賞優秀賞
「第9回ふるさとイベント大賞」で、「南の島の星まつり2004」が優秀賞に選ばれた。
財団法人地域活性化センターと全国58新聞社の共催による「第9回ふるさとイベント大賞」で、「南の島の星まつり2004」が優秀賞に選ばれた。全国から応募があった136のイベントから選出され、天文観測のイベントとしては初の受賞となった。ライトアップによるイベントが多い中、全島ライトダウンによって天然資源の星を美しい形で見せるというユニークな発想と、会場だけでなく地域が一体となって協力し、市・NPO団体・国立天文台など多くの団体が実行委員会としてイベントを盛り上げていることが評価のポイントとなった。
2002年に始まった南の島の星まつり。最初は八重山星の会の会員たちが中心になってライトダウンを呼びかけて回るという手作り企画だった。ホテルや港、商店街などがライトダウンに協力し、夜空いっぱいに広がる天の川を見て会場に集まった約2000人から歓声が沸き起こった。2003年には石垣市長を委員長とした実行委員会が立ち上がり、全島ライトダウンのイベントということで全国から注目を集めた。2004年には約1万人が集まり、石垣島の恒例行事として市民に定着してきたようだ。
そして今年は「君が天文学者」と題して地元の高校生と東京大学の大学院生がVERA石垣島局を使った協同研究の発表が行われる。八重山星の会の新崎さんは「学術的に高い人たちと石垣の高校生が研究交流して、星という地元の天然資源の素晴らしさを知ってもらえたら嬉しい、市民のみなさんは今年の南の島の星まつりを楽しみにして頂きたい」と話す。
日本最南端に位置する八重山は偏西風の影響が少なく天文観測に優れた地域といわれる。88星座のうち84星座を観測でき、21の1等星がすべて見られる。また12月?6月の時期には南十字星と北極星が同時に見えるので多くの天文ファンが集まる。
望遠鏡は口径105cmと九州沖縄地区では最大級のもの
2004年4月には国立天文台の海部台長、大浜石垣市長、八重山星の会の通事代表理事が集まり、石垣島天文台の建設計画の発表が行われた。現在前勢岳頂上に建設中で今年12月には完成予定。国立天文台、石垣市、八重山星の会の3者の連携による新しいタイプの天文台で、導入される望遠鏡は口径105cmと九州沖縄地区では最大級のものとなる。本来、天文台は星の観測や宇宙研究を目的として、学者や大学教授のための施設となりがちだが、石垣島天文台は公開天文台として市民にも開放される。また学校とも連携を図り、地元の子どもたちが天文について学べるような環境を整えている。
八重山星の会の新崎善國さんは「八重山は自然や文化など研究材料の宝庫で、いろいろな学者が訪れています。研究施設を八重山に置くことによって学術的により高い研究も可能になると思います。また八重山では子どもの進学の際にばく大なお金がかかります。島外の大学の学部を石垣島において、専門科目だけでも地元で学べるようなシステムができればと思います。観光だけではブームが去ったら終わりです。学校があれば人も入ってくるのでは」と石垣島天文台完成後の島の将来像を話す。