旧盆アンガマ

旧盆アンガマ

 8月26日は旧盆の迎えの日(旧暦の7月13日)。各家庭では仏壇に供物を用意。この日ばかりは離れて暮らす家族も仏前に集い、親類縁者の来訪にも備えて、一日、あわただしい時間が始まります。
 先祖の霊を招き、仏前で親族ら集う中、感謝の言葉と共に手を合わせ、ともに飲食をする。幼いものらへ、親族集うのこのときの記憶を授け、想いを託していく。八重山には、あの世からの使者、ウシュマイとウミーがファーマーと呼ばれる子孫を引き連れて、仏壇の前で舞踊を披露し、思い出にのこる旧盆行事を付け加える。これがアンガマ行事。
 地域の青年会が、あの世の使者に扮して、要望のある各家庭の仏壇の前に登場し、にぎやかに舞い躍る。なかでも、ウシュマイとウミーが、タオルで顔を隠す一般人に扮したヤジと交わす問答が面白い。方言たっぷりで観光客には理解が難しいが、時々、標準語も混じって意味がわかることもある。南国八重山の独特の方言が応酬されて、会場の盛り上がりが面白い。
 8月26日、登野城青年会が繰り広げたアンガマは、なにしろウシュマイの面に味があると評判で、この日も地域の伝統を物語る光景を5軒ほどの家々の仏壇の前で披露して、見物人や呼んだ家の人を喜ばせていた。記録に残らず、勢いあの世の使者が自由にものを語れた空間が、昔からあったとすれば、これほどすごいものはない。方言は、目上、目下がはっきりした言語体系の中にあったもの。それでいて、自由にあの世という最上階から下界の首里王府や役人を、見下ろして語っていたなら面白い。堂々とした使者の姿がこの面から想像される。これぞ、祖先崇拝・父母の恩を絆にまとまる地域文化の生きた化石だ。お盆行事は、新川、大川、石垣、大浜、真栄里のアンガマのほか、白保の獅子舞、双葉のエイサーと、多彩に3日間行われれる。日程は、地域の新聞紙上に載せられる。
 お盆の次の日はイタシキバラと呼ばれる行事がある。地域を清め、女性陣への慰労の行事で、これが終わって旧盆行事が終了する。昔は、仏壇への供物の内容が、極めて厳格で嫁を泣かせた苦難の行事だったとか。もののない時代に、決められた作物を島で探して調理し、霊供盆にそろえきるのは、格闘そのもの。最後に慰労の時間を用意したのはそんな理由だ。今は市販のオードブルで済ませられる。

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