荒川のヒカンザクラ開花

荒川のヒカンザクラ開花

 サクラの開花は、植栽された場所でのものが大半だが、石垣島には山で咲くヒカンザクラが数多く見られる自生地エリアがある。国指定の天然記念物として知られる荒川のヒカンザクラ自生地だ。石垣島の山岳部である於茂登山系北側に広がる桴海地区。その桴海於茂登と呼ばれる山から米原に流れる急流の荒川には多数の滝がある。上流部の「3の滝」と呼ばれる近辺には、ヒカンザクラの自生地が広がっている。この桜の開花時期には、県道79号から山を望むと、赤い塊が見えてくる。それが桜の満開の様子であることがわかるのは、この地区にヒカンザクラの自生地があることを知っている人だ。イノシシが出没するエリアでもあれば、足は遠のきやすいが、珍しい桜の自生地であり、なおかつ風光明媚な場所に咲く桜の姿は、なかなか見応えがある。2月11日、曇り空ながら寒気が緩んだ日に1時間かけて登坂すると、ちょっと遅きの感ある葉桜混じりの桜の開花が見られた。周囲には満開の桜も見られた。人の目の届かぬ場所で、可憐に咲いて散る樹齢150年から200年のヒカンザクラは、太い幹は横に這い、腐った部分も露わだが、それでも絶えず響く滝の音の前で、悠然と枝先に深紅の桜花を咲かせていた。

この記事をシェアする