11月の八重山の田んぼでは、二期米の刈り入れや、来期への植え付けの準備のための深耕・代掻きが始まる時期に入っている。土地の狭さから農業が行われなくなったが、農事の大祭を昔のままに行っている島がある。その島最大の行事でもある祭りの奉納行事が11月20日21日の二日間開催された。500年以上前から、秋の農作物の種子を播く時期に、種子が無事根付き、五穀豊穣と来夏世への豊穣を神に祈願する竹富島の種子取祭(たねどりさい)だ。全島民をあげて行われるもので、国の重要無形文化財にも指定されているため、この日は島出身者でなる郷友会や観光客だけでなく、伝統文化の研究者も多く訪れて、いっしょに祭りに加わり、夜を徹して踊り舞う。一般人が参加できる伝統行事で、竹富島の好きな観光客には見逃せない行事となっている。島では「たなどぅい」の名で呼ばれる「種子取り祭」は、大自然と向かい合い、神への祈りの真剣さが、その奉納を通して伝わる重厚な祭りだ。今は、島の結束や個々の家内安全と繁栄を願っての祭りとなり、島の自然と伝統文化を大切にする観光の島として、内外から注目される祭りになっている。11月20日は玻座真村の奉納が行われ、午前9時半から庭の芸能がスタート。根原家から道歌を歌いながら会場の世持御嶽に到着した神司と役員一同は、庭での巻き踊りを披露した後、「棒術」から「太鼓」「マミドウ」「ジッチュ」「マサカイ」「祝い種子取り」「腕棒」と続き、最後に「馬ぬ者」を演じて、庭の芸能を締めくくっていた。舞台の芸能に移ると、「長老」「弥勒」「鍛冶工」「赤馬節」と演目は続き、晴れやかさ、豊穣さ、楽しさ、華やかさが満ちた、彩り豊かな舞台を披露。来場者は、しきりにカメラを操作して、記念の一瞬を残そうと、熱い視線が舞台に注がれていた。