2001年6月23日に八重山戦争マラリアで犠牲となった御霊を慰めるため、マラリア特効薬キニーネの原料であるキナノキ17本を石垣市バンナ公園Aゾーンにある八重山戦争マラリア犠牲者慰霊の塔の裏手に植栽。(次の年に塩害で枯れたため、3本追加。計20本)これがあれば助かったかもしれないとの思いで、太平洋戦争終結56年目の慰霊の日に、八重山戦争マラリア犠牲者慰霊の塔での慰霊祭の後、植樹祭で植えられた、唯一、一本残ったアカキナノキが10月3日、根元から折れ、網の囲いとともに倒れているのが確認された。幹には何かに擦られた跡が残り、痛々しい姿となっていた。台風17号の襲来は9月28日で、5日間気づかれないままだったことになる。八重山戦争マラリア遺族会会長の篠原武夫氏は、「植えたキナノキ17本(後に3本追加)が、ほとんど枯れた中、奇跡的に花を咲かせ、実もつけた貴重なアカキナノキ。路地で生育する木は、日本にこの一本しかないのに、沖縄県はこれを守れないのでは、実に情けない」と、激しく憤っていた。沖縄県援護課の担当の与儀清祐(32)氏は、「アカキナノキが台風で倒れたという連絡は受けていない」とのこと。なお、西表島の林木育種センターの尾坂尚紀(27)係員は「キナノキは生命力が強く挿し木などに向いており、折れた木があるなら、早い時期、挿し木にすれば、復活はある」と述べていた。路地のアカキナノキは、日本では一本しかない樹木だ。造園会社に樹木医の資格もつ人もおり、そういった人に早期に任せる手もある模様。11年間、枯れずに来たアカキナノキだが、保護のために設置した黒い箱状の網が、逆にあだになったともとれそう。開花と結実を見せた唯一、石垣島のバンナの土壌と気候に馴化した木であれば、生命力の強さに、期待したい。