西表島の森に鎮魂の碑

西表島の森に鎮魂の碑
西表島の森に鎮魂の碑
西表島の森に鎮魂の碑

 西表島には明治・大正・昭和と炭坑での過酷な労働による犠牲者があり、負の遺産ともいえる遺構が戦後60年以上ジャングルの中に放置されてきた。6月20日午前10時から浦内川河口の宇多良(ウタラ)炭坑跡周辺で宇多良炭坑跡地整備事業の落成式と、宇多良炭坑夫への慰霊碑の除幕式がおこなわれた。この日、竹富町、竹富町観光協会、西表島エコツーリズム協会などのほか近隣住民など70人近い人々が集まって、炭坑跡の整備事業落成式に参加。テープカットの後、整備された宇多良炭坑跡地へ移動して慰霊碑の式典に加わった。同跡地は歩きやすく木道を設置した地域の歴史を後世に遺すために、昔の写真などのパネルを置いて、教育的な目的ももたせたている。慰霊碑は「萬骨碑」と刻まれた石碑で、建立を祝い、宇多良炭坑での仏事を担った僧侶とゆかりある喜宝院住職が読経する中、参加者が線香を焚いて冥福を祈った。建立の発端は、戦後、閉山された炭坑跡を様々なゆかりある人が訪ねるのを知って、その鎮魂の碑と整備の必要性を感じてきた地域住民が、西表島にある炭坑遺構群が近代化産業遺産群(全国33カ所に指定)のひとつに認定された(2007年)のを期に、関係機関へ呼びかけた。2008年、林野庁の西表島の自然休養林の整備計画が、遺構群のひとつ宇多良炭坑跡周辺ではじまったことで、竹富町が同遺産群認定からスタートさせた自然伝統文化を生かした交流促進事業とうまく連携でき、関心高い地域住民からの意見を集約できた。かくして県内には珍しい炭坑の歴史を掘り返し、後世に長く伝え、かつ炭坑で過酷な労働の下で亡くなっていった炭坑夫への慰霊の気持を込めた碑が建立されることとなった。萬骨碑建立期成会会長の三木健氏によると、萬骨(ばんこつ)碑と名付けられた石碑の「萬骨」は、「一将功なりて万骨枯る」の万骨からとった庶民を意味するもの。この碑は、炭坑会社の口車に乗せられてこの宇多良炭坑で強制労働させられ、非業の死を遂げた炭坑夫への鎮魂の碑。広大な面積を占めた炭坑施設が60年以上放置され、今は煉瓦のトロッコ線路の土台だけが残る一角に慰霊碑を建立することで、犠牲者を忘れないよう、歴史に刻み遺すのが目的。

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