60センチのタマン(ハマフエフキ)をねらって深夜の浜で、粘る釣り人は午後8時から翌朝5時まで、寝ずに暗闇でじっとしている。5月26日午前3時、とある浜に2組の釣り人が10mの間隔で離れて、海に向かって大きな釣竿を立てていた。うわさでこの浜でタマンの大物を釣ったと聞いたことから、この浜に誘われて来たという。この浜は、はじめてだとも。まったくの闇の中で、月明かりもまだ弱い中潮だが、早朝の満潮に期待して、大物タマンの来訪を待つ。深夜の静寂の中で、波の音だけが絶えず響きわたる砂浜に、腰掛と釣竿を固定する用具を設置して、夜の浜風に当たり続ける人々は、タマンの4月から6月の産卵期に照準を合わせて、釣りの醍醐味をただ一人味わうために、こうして佇んでいる。場所は夏場に急増するハブクラゲで知られる浜。ただ、当たり前だが、釣りの魅力はやる人にしかわからない。海は夏本番に向けにぎやかになろうとする時期、浜もまた同様にぎやかになる。