午前2時30分に海岸を歩く人がある。ウミガメを調査する彼らは、県の水産資源管理の委託を受けており、3月下旬から黙々とこの暗闇の中を足場の悪い深い砂地や岩場地帯、崖の斜面を、慎重に歩き続ける。電灯を煌々と照らせばウミガメは上陸を躊躇する。であれば極力つかないようになる。真っ暗闇の中を、月夜の明るさが頼りだ。ウミガメが上陸していれば、足跡が砂に付いている。それを月明かりで見極めなければならない。まず素人には無理な相談だ。海岸に打ち寄せる波の音の大きいこと。陸には植物の影が黒々と横たわる。寄せる波と砂の色が変化したかに見える波打ち際が、唯一歩きやすい場所。黙々と、ウミガメの気配に集中して、重い足を前に繰り出し続ける。ウミガメは、一度の上陸・産卵を確認されると、約12日間隔で次回の産卵行動が行われる。しかも、アカウミガメなどは2度目、3度目が1度目の近くに成りやすい。これまでのウミガメの産卵行動データで、どの当たりに上陸するかがおおよそ予測がついてくる。そこで産卵直後の砂の様子で、確認する以外に、直に産卵の現場で調査する方法は、この夜間に上陸する可能性有る場所に待機して、ただひたすらその海岸を移動し、勘を頼りに待つだけ。上陸する祭の潮の満ち加減は、海岸に至る前に亀の甲羅が座礁しない深度が必要なことから、いつぐらいに来るかが計算されてくる。時折、波打ち際で一瞬だけ夜光虫が輝きを見せることがある。知らないと恐ろしい気分になる。今年もウミガメ調査が10月頃まで有志によって実行されている。