1階は施主の宮良直人さんの両親と弟の光次郎さんが、2階は直人さん家族が暮らす宮良さんの家。建物は二世帯住宅だが、実はこの家には内階段がない。お風呂やキッチンもそれぞれ独立しており、直人さんは「2つの家が同じ建物内にあるようなもの」と言う。
直人さん家族には、小学4年、小学2年、幼稚園の3人の子どもがおり、直人さんも仕事柄、夜遅く帰ることも多いという。「子どもたちが騒いだり、夜遅く帰ってきたときに両親に気を使いたくなかったんです」と直人さんは話す。それには両親の孫立さんとあい子さんも賛成で、2階へは外階段から出入りする造りになっている。「それでも少し心配なので、外階段の近くに勝手口を作ったのですが、そこはいつも鍵がかかっててね」と直人さんは笑う。
実はその勝手口、孫立さんのお気に入りの場所なのだそうだ。孫立さんはよくイノシシを獲りに行ったり、船で魚釣りに行くことが多いが、これまで捌く時は地面で行っていたという。その話を聞いたYOU設計室の守下さんが「外部流し場があったほうがいいのではないか」と直人さんに提案し、勝手口の中のスペースに水回りや台を設置して流し場にした。今は足を痛めて猟や釣りに行けないという孫立さんだが、「来年はたくさん獲ってきたい」と意気込んでいる。
また両親が暮らす1階は、玄関からリビング、トイレに続く廊下に手すりが設置されており、将来車いすになっても大丈夫なようにドアを大きくするなど、バリアフリーにも気を配りながら設計されている。それらは守下さんからの提案だといい、奥さんの公美さんは「私たち家族のライフスタイルを細かく聞いた上で、いろいろなことを提案してくれたので、とてもいいお家になりました」と喜ぶ。
新しい家が建つ前の両親が住んでいた家は、木も生い茂り、塀にも囲まれて、暗くて風通しも悪かったそうだ。新しい家には何本もあった木から桜一本だけを残し、芝生の中庭に移した。「来年の春は、家族みんなで花見するのが楽しみです」。