食品製造業を営む私は、長年食に関する仕事をしてきました。思えば実家も農業兼食料品製造業でしたので生涯のほとんどが、食にまつわるエトセトラで成り立っているのです。西表島の加工所を維持しつつ、カンボジアでも飲食の開店支援などのお仕事をさせていただいています。メニュー考案や市場調査、材料の仕入値探検など作業は地味で多岐にわたります。一から何かを作り出すので楽しい作業も多いのですけどね。
さて飲食店等である商品を提供しようとするとき、必ず原価計算をします。きちんと計算をしない店もありますが、ここをやるかやらないかは損益分岐を考える上でも大事なことだと思っていました。あの出来事までは…。
カンボジアに来て、その原価率の概念を覆されつつあります。ここ10日ほど1日2食屋台食チャレンジをしてきましたが平均$1(105円)で食べられます。安いものは50円位、1人前はちょっと少なめですが現地の人は1日4回以上食べるのでそう考えるとちょうどいい量なのでしょう。これが結構お肉もどっさり入った麺やお粥でもその値段。市場の食材価格を考えてもどうも合わない。不思議に思っていると現地の友人が屋台ビジネスの人の多くは、究極の薄利多売でやっているとのこと。1食の純利益が5円でも300食売れば1日$15の上がり、これは現地の人の平均賃金の3倍ほどになります。更には地方に親戚が居て米や野菜や肉を作っている人も多いようです。自身の利益にもなり、親族への収入源も提供している、というかなり理の叶った仕組みのご様子。
沖縄でも目利きの銀二という居酒屋さんが原価200%のメニュー提供で話題になったことがありました。メニューの中に提供価格が仕入価格を下回るものを入れ込むのです。顧客満足度の向上にもつながります。その赤字をどこで回収するかというと、ドリンクの販売や原価率の低いメニューで吸収するというモデル。仕入価格が決して安くはない沖縄では中々簡単ではなく一か八かの勝負のような気もしますが…。
一連の屋台生活で感じたのは原価にそれほどこだわらず、客層のお財布事情に合わせることの大切さ…。原価率を追い求めすぎるばかりに関心のある客層を逃してしまうこともありますからね。まずは関心を持ってもらう事、試してもらう事、それが大切なんだなーと感じた次第です。発展途上国生活、中々勉強になることばかりです。