十月になると朝晩は涼しく過ごし易い。しかし、この頃から空気が乾燥し、火災が発生し易くなるので「油断(ゆだん)や敵(かたぎぃ)」(油断大敵)だ。
『琉球国由来記』巻二一は、八重山の聖域・祭祀に関する記事が中心だが、それに「十月タカベノ事」がある。十月は火の用心に竃廻りを行うとの事。現在、竹富島では旧暦十月壬の日を十月祭と定め、真知御嶽等を参拝する。ここでは線香に火を灯さず束のまま供えるのが慣わし。ここに火災への配慮がうかがえる。
「盗人(ぬしぃとぅれぃー) 一荷(ぴとぅにー) 火(ぴぃー)やむる持(む)ちぃ」(盗人は一荷 火はもろ持ち)というように、泥棒は盗り残しがあるが、火事(ぴぃーぐとぅ)は何もかも持っていく。いざ火事に遭った時、「火(ぴぃー)ならばん水(みじぃ)ならばん誰(たー)知(しぃ)たがー」(火になっても水になっても誰が知ったことか)と腹の据わる人はほとんどいない。たいてい「火踏(ぴぃーふ)んちぃき鶏(どぅりぃ)」(火踏みつけ鶏)の如く慌てふためくのが常。子供達には「童(やらび)ぬ火(ぴぃー)んだぶっかー尿(しぃばりぃ)どぅふき」(子どもが火を弄べば尿を漏らす)と戒めよう。