憂欝の四年が始まった。

石垣市長選挙が終わった。結果は自民党大勝革新惨敗である。
原因は色々あろうが、保守は名護市長選挙敗北を受けて自公が強力なてこ入れをしたことが勝因にあげられるだろう。知事選を視野に絶対負けられない選挙であったはずだ。大物国会議員を投入し国政選挙なみの運動を展開したことだ。それに、地縁、血縁選挙を徹底したことだ。
これは、革新側にもいえるが、いわゆる、政策などおかまいなし。ピィキ(縁故)、ユイ(共同作業)選挙である。革新はその、〈アジア型〉選挙に敗北したと言える。
 革新は市民党をなのり、保守層の一部も取り込んで政権奪回をめざす体制を組んだが、思うように支持は拡大せず惨敗した。敗北の原因は、市長候補が石垣市に居住せず、唐突な感じで出馬したことだ。革新は前回の大敗をどのように総括し、今回また、同じ人物に決定したのか。市民にはよくわからない。
革新支持者が「なんでまた彼なのか」という声を多く聞いた。「前回大敗を喫し、医者不足の八重山を見棄てて、ヤンバルに逃げたひとを誰が応援するかー」という憤懣の声や、「それほど革新は人材不足か。」「前回の選挙であれほど問題となった、女性スキャンダルはどうなったんですか」と問いかける女性。ひとの噂も七十五日というが、そう簡単には忘れないということを知った。
ベテラン市長という声も聞こえたが、民心はすでに彼から離れていた。知らぬは革新のお偉方だけであろう。謙虚に耳を傾ければ大衆の声が聞こえて来るはずだ。
 選挙中、『琉球新報』が陸上自衛隊、石垣に2候補地という記事を掲載した。それによると、防衛省は南西諸島の防衛計画の一環として計画している陸上自衛隊の配備先として石垣市の八島新港地区、宮良サッカーパークあかんまの2ヶ所を候補に挙げ最終調整に入っていると報じた。この報道に対して防衛省や自民党石垣支部が誤報、選挙妨害と抗議した。しかし、琉球新報はこれを拒否、防衛省が日本新聞協会に申し入れを行ったのに対し、日本新聞労働組合連合は「報道に対する国家権力の発動であり、不当な介入にほかならない」(「八重山毎日新聞」3月6日号)と抗議した。
 自衛隊配備計画は国家戦略会議における重要課題で、中期防衛計画でも先島配備は既成事実である。防衛省は配備先を否定しているのではない。日本報道検証機構なるものの「GOHOO」によれば、防衛省の関係者は陸自の警備部隊の配備先に石垣島が含まれているかどうかについて「南西諸島全域が候補地なので、含まれていないわけではない」と認め、3月中にある程度絞り込まれることを否定しなかった。ただ、「現時点で石垣島に絞ったという事実もなければ、石垣島の2ヶ所を候補地に挙げて最終調整しているという事実もない」と報道を否定したと記している。
ではどこを候補地として3月中の絞り込みをするというのか。宮古には自衛隊が配備されており、国境の島与那国にも配備が決定している。
 では、あとはどこか、石垣島以外にはない。2月11日に講演した陸自第15旅団長は「どこに置くかは人が多い島になる」と述べている。人の多い島は石垣島をおいてほかにない。新港地区やサッカーパークあかんまはこれまで、自衛隊が度々使用して来た。さらに、聞くところによれば、八重山防衛協会関係者もこの地区を提案していたという。では、報道以外に検討されている地区はどこがあるのか。大崎牧場、新旧石垣空港周辺との報道もあった。空も、山も、海も演習で騒音だらけの島となろう。
選挙戦では自衛隊を自ら誘致はしない。自衛隊から話があればテーブルにつくと中山候補は述べていたが、大差に気を良くしてか、自衛隊誘致の賛否について、住民投票も考えられると語っている。革新は「陸自、石垣に2候補地」という報道に平和憲法を守る八重山連絡協議会が抗議と撤回をもとめる要請をしただけで、党派を超えて構成されている市民党内部の保守系に配慮し、さらに無党派層を取り込むために抗議集会は事後と決定したという。
 たたかわぬ革新に何の魅力があるか。革新なき革新は保守なのである。策士もいない。革新が窮地に追い込まれていることは明らかだ。
二期目に入った新自由主義市長はいよいよ、その本性を現すであろう。憂欝の四年が始まった。

大田 静男

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