平久保半島のヤマターラヤマ(山当山・246メートル)連山の西側山ろくに奇跡的に根を張るヤエヤマシタン(マメ科)の巨木です。右側の同シタンは、胸高の幹回り2メートル30センチ、樹高約15メートルです。左側の幹回りは1メートル95センチ、樹高は同じく約15メートルの堂々の巨木です。
落葉の高木・ヤエヤマシタンは、フイリピンやインドネシア等にも分布し、樹高は25メートルに達する超巨木もあるようです。石垣島は、シタン属の北限とも言われ、かつては山中に豊富に自生していたようです。今のところ、西表島に自生するとの報告はないようです。ヤエヤマシタンは、木目の美しさから乱伐され、明治初期にはほとんどが伐採されたと伝えます。
前述した「奇跡的」とは、すでに伐採されていてもおかしくない場所(山ろく)のヤエヤマシタンが、巨木のまま残っている故の表現です。その後、幹回り30センチ以上の開花・結実をする成木の自生固体が、写真の付近で2本・川平に1本・川原に1本・野底に1本発見され、合計7本のヤエヤマシタンが確認されました。八重守之塔の西側に位置する石垣市の苗畑内や市内の各所に生えるヤエヤマシタンは、平久保のヤエヤマシタンが親木のようです。
同巨木2本は、1950(昭和25)年に琉球政府指定の天然記念物「平久保のヤエヤマシタン」となり、復帰の1972(昭和47)年に国指定として引き継がれました。その後、何者かによって根元付近の幹が切り取られる事件があり、「被害を受けるヤエヤマシタン」「幹の一部を切り取る」と、1984(昭和59)年2月の地元紙が大きく報じています。今も当時の切り跡が残ります。
今回は、偶然に遭遇した巨樹・巨木ではなく、不定期ではあるが付近を通過するときには、その近況を確かめているヤエヤマシタンです。連載してきた巨樹・巨木との遭遇は、(32)をもって(完)とします。