川平・前嵩の旧クイツ牧で遭遇したハマイヌビワ(クワ科)の巨木です。転落しないように無数の根を広げ伸ばし、しっかりと岩に抱き付いていました。
旧クイツ牧とは、底地ビーチの広大な駐車場の南端から西回りで南下し、崎枝湾のクルマエビ養殖場背後の山ろくまでの南北に長い牧です。同牧は、明治以前からあった古い宇利真(ウレマ)牧を昭和23年に引き継いだ牧ですが、すでに廃牧となりジャングルと化しています。
さて、常緑の低木又は小高木のハマイヌビワは、奄美以南の琉球の海岸近くの石灰岩地帯に多く自生します。また、台湾・フィリピン・ニューギニア等にも自生するようです。ハマイヌビワは、ガジュマルやアコウと同じく、絞め殺しを得意とする植物です。鳥のふんに含まれた種子が他の植物の上部で発芽し、徐々に根を下ろしながら宿主を絞め殺して成長します。いわゆる、恩をあだで返す植物です。しかし、写真のハマイヌビワは、たまたま巨岩の側面で発芽して成長したようです。その網目の様な根につい足が止まりました。
一方、先人たちはアリンガフ(方言名:ただし地方によって若干異なる)と呼び、なじみの深い植物であったようです。それは、火種の材料としてよく使用されたからだそうです。つまり、線香のように火種のまま長時間消えないため、野良仕事のときは火筒に入れて出かけたと当時を話します。
今回は、うるずん真っ只中の旧クイツ牧で遭遇したハマイヌビワでした。