名蔵アンパルの動植物たちシリーズ(4)

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アンパルに生息する日本一大きなハゼと小さなハゼ

 春になると色んな魚の稚魚が海から上がってきます。マングローブ林の細流にあるヤエヤマヒルギのはりめぐされた支柱根の隙間に小さな魚が群れています。網ですくってみると何と全長2cmに満たないハゼがたくさん入っています。これはマングローブゴマハゼの成魚です。比べてみると他の魚の稚魚よりも小さなことがあります。アンパルにはマングローブゴマハゼやミツボシゴマハゼのゴマハゼの仲間が生息しますが、いずれも全長2cm以下で日本で一番小さなハゼといわれています。水槽に入れてみてみると、第一背鰭の前縁に黒い線が入る愛嬌のある魚です。このハゼを他の魚と一緒に入れておくと、まず食べられてしまいます。野外ではヤエヤマヒルギの支柱根に守られて生きていること、他の生物の重要な餌生物になっていることがわかります。一方、深みで釣りをすると口の大きくて人に例えると人相の悪い全長30cmを越える大きなハゼが釣れることがあります。これがホシマダラハゼです。このハゼは成長に伴って体側の模様が変わり、小さいときは第2背鰭前部と尾鰭の基部にある白い横帯が目立ちますが、成長すると体側の鱗が白くなり白斑がつがながって星のように見えるので、この名前がついています。このハゼは汽水を含む淡水域では日本で一番大きなハゼと言われています。動きはそんなに速くありませんが、近づいてきた小魚を補食する魚食魚です。魚の中では食物連鎖の上位の種になります。このようにアンパルにはハゼ一つとっても小さなハゼから大きなハゼまで生息している多様な場所だといえます
 ところで、マングローブ林内の魚って観察しにくいですよね。そんなときは持つところの着いた小さなプラスチックの水槽を持っていって下さい。網で捕れた魚を水槽に入れて横から見ると、上から見ているのと違う模様や泳ぎ方を観察することができます。そして見た後はそっと元の場所に返してあげてください。

藤本 治彦

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