「アンパル」は、西表・石垣国立公園の一部であり、ラムサール条約に登録された国際的に認められた重要な湿地です。観察会や現地調査などを重ね、アンパルのことを知れば知るほど、アンパルのもつ生物多様性を大事にしなければならないという気持ちが強くなってきます。発足以来、会では観察会を年に何回も開催し、市民、特に子どもたちにアンパルに親しんでもらう事業を重視してきました。観察会については、さまざまな角度、分野からアンパルを体験できるように工夫もしてきました。2012年度には、学校単位の観察会が増えました。9月になって、真喜良小学校、富野小学校、八重山特別支援学校の観察会が連続して実施されました。これまで名蔵小中学校ではたびたび観察会を開催していましたが、内容は講師の先生方におまかせでした。今後、学校の観察会が多くなることを想定した場合、児童向けのガイドの充実が必要になってくると思います。
幸い、今年3月発行予定で「新アンパルガイド」の制作が進められています。間もなく原稿、写真等がそろい基本的作業が終わりそうです。編集作業をしながら「新アンパルガイド」をどのように活用していくのかという話をしています。その中で、「新アンパルガイド」を使って「アンパルガイド養成講座」を開催しようという構想があります。「新アンパルガイド」に執筆している各分野の専門家に講師になっていただき、「アンパルガイドを養成しよう」という提案です。「アンパルガイド養成講座」には、観光客のためのガイド、エコツーリズムを職業とするガイド、現役の学校の先生や退職された先生方、さまざまな分野で自然環境保全に取り組む団体、個人にも参加してほしいです。当然、ガイドする対象に応じた資料、マニュアルなどが必要になります。今のところ観光客向けの簡易な「リーフレット」は作成される予定ですが、学校用には、先生方にパワーポイントなどで生徒に説明できるものを作れないかなという提案もあります。私たちは石垣市に「アンパルガイド養成講座」の今年度開設を要請しています。講座の内容、構成などについて、今後具体的に提案していくつもりです。
環境省は「アンパル園地整備計画案」を素案として提案しています。残念ながら、環境省案には「アンパルを子どもたちの自然環境教育の拠点として活用する」という考えは希薄です。アンパルの貴重な自然を生かすも殺すも、石垣市民がアンパルを理解しているかどうかにかかってきます。子どもたちに、アンパルの自然について教えることができるガイドが養成されれば、それが実現できます。観光客にだけガイドをするのであれば、アンパルの自然は守れないでしょう。観光資源としてアンパルを消費するだけで終わってしまいます。保全と賢明な利用が両立するには、この島の未来を担う子どもたちのために何ができるのかが問題なのです。アンパル園地整備計画に管理者、ガイドが常駐し、子どもたちのための自然環境教育ができる施設(教室、事務所)などを併設してほしいものです。沖縄本島の「漫湖水鳥・湿地センター」はそのよい見本です。