巨樹・巨木との遭遇(22)

巨樹・巨木との遭遇(22)
巨樹・巨木との遭遇(22)
巨樹・巨木との遭遇(22)

ゴバンノアシ

 小浜島・コーキの海岸で遭遇したゴバンノアシ(サガリバナ科)です。幹回りは1メートル30センチ、樹高は5メートル弱です。他の高木樹種と比較すれば、決して巨樹とは言えませんが、ゴバンノアシとしては堂々の巨木です。
 ゴバンノアシは、海岸に生える常緑の植物です。沖縄県では、石垣島や西表島に稀産し、台湾・マレーシア・オーストラリアなどの太平洋の島々に分布する植物です。しかし、自身、石垣島の海岸に自生するゴバンノアシに遭遇したことはありません。また、西表島の海岸線は、その多くが未踏です。ところで、ゴバンノアシというユーモラスな和名は、その果実(写真)にあります。形といい大きさといい、まるで「碁盤の足」そっくりの果実です。
 さて、昨年の初夏に前述の海岸で遭遇したゴバンノアシです。琉球石灰岩の岩間に根を下ろしていました。冬季には北風が吹きすさび、また、台風時には高波をかぶる最悪の環境です。枝先の多くが折れているのは、そのせいかも知れません。そのため、樹高も前述の頭打ちのようです。しかし、このような環境にもかかわらず、ここまで育った彼女には脱帽です。
 少し脱線します。ここコーキの海岸は、昭和10年にトラバーチンの採石事業が行われた場所です。トラバーチンとは、平行な縞状の細孔をもつ無機質石灰岩のことです。小浜島のトラバーチンは、その良質さが買われ、国会議事堂の中央広間の壁材として使用されました。しかし、昭和18年、太平洋戦争の混乱で採石事業は終了したようです。現在、一帯には未採石のトラバーチンが大規模に露出し、その上部に根を張る巨木・ガジュマル(クワ科)の群落は見事です。同群落は、昭和51年3月に「コーキ原のガジュマル群落」として、竹富町指定の天然記念物になりました。
 今回は小浜島で遭遇した奇跡の1本・ゴバンノアシです。これからは、機会あるごとに彼女を訪ね、近況を確認したいと思います。

松島 昭司

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