凪ぎだる世ばあざらしぃ

 連日の猛暑に気力が萎えている。それなのに、今までの怠惰のつけが廻って来て、挽回するのにカンズメ状態でクタクタである。曜日も忘れ、新聞ならぬ古聞を読み、「あーがやー○○さん、まーらしどぅあれーりゃん」(ああ、○さんが亡くなられていらっしゃった)と謹告に驚き、「○○集会ぬどぅあれーりゃん」(○○集会があったのか)とがっかり。不義理ばかりが積もっていく。「道からあらがんばんゆーでーじしーっちゃん」(世間に顔向けも出来ない大変なことになった)と思っている。それにしても、紙面は尖閣、尖閣だらけとオスプレイだらけである。
 その尖閣、地元をさておき、中国、ヤマトゥーターの言いたい放題、やりたい放題である。日本の政治屋の神経を逆なでする発言。中国が尖閣で日本を批判するのは国内事情のためだ、と床屋の親父と同じレベルの評論屋たち。「けらまーみーしが、まつげーみーらん」(慶良間はみえるが睫毛はみえない)のように領土は見えるが、人は見えないというようなひとたちが、連日、テレビに登場し床屋政談を見せつけられるとウンザリする。
 さて、石原東京都知事のアメリカでの尖閣購入表明を機に沸騰した尖閣騒動は、国が購入して終わった。いったいこの騒動はなにか。石原親子のパフフォーマンスに振り回され、中国では連日反日デモが行われ、諸行事が中止され、日本大使の車両から国旗が持ち去られ、日本人が暴行されたりしている。中国の監視船六隻が領海侵犯を繰り返した。反日デモも拡大をみせている。「らーらーらーあんくだそう、なぎうだくぬゆーば、あざりゆーばなし」(それみろ、いっだだろう。凪いでいた世を険しい世にしてしまった)。のは誰であるか。対立を煽るのはアメリカであることは間違いないであろう。それに、ハゲ鷹のような〈各国〉の死の商人たちが密通し、ナショナリズムに火をつけ、対立を扇動しているはずだ。アメリカの掌の上で孫悟空のようにパフォーマンスを演じているのが石原都知事であろう。普天間基地の辺野古移設は暗礁に乗り上げ、オスプレイ配備に反対する。言いなりにならない沖縄を揺さぶる切り札として出て来たのが尖閣問題である。与那国への自衛隊配備、育鵬社版教科書採用、尖閣購入、オスプレイ配備など総てが連動しているのである。
 知人から教示されたのだが、豊下楢彦関西大学教授によれば「尖閣諸島の久場島、大正島は米軍の射爆撃場となっており、両島は日本人が立ち入れない米軍の排他的な管理区域となっている。にもかかわらず、米国は沖縄返還の前年一九七一年六月の返還協定の調印を前に、沖縄と一緒に尖閣諸島の施政権の返還をするが、主権問題に関しては中立の立場を方針と決定した。これはニクソン政権期で米中和解による中国への配慮であることに加えて、日中間で領土紛争が存在すれば沖縄の本土への返還以降も米軍の沖縄駐留はより正当化されるという思惑であった。つまり、尖閣諸島の帰属に関するあまい戦略は沖縄返還に際して、日中間にあえて紛争の火種を残し米軍のプレゼンスを確保しようとする狙いがあったのである。」(『世界』二〇一二年八月号)
 これですべてが見透されるではないか。米国戦略の手先となって尖閣問題で中国脅威論を振りまき、与那国島への自衛隊配備、中国漁船の衝突事件を契機に尖閣購入騒動を起こし、オスプレイが尖閣を守るなどという口実で配備し米軍基地の固定化を図る。石原伸晃自民党幹事長が二〇一一年一二月ワシントンDCで、保守系シンクタンク・ハドソン研究所で講演し、尖閣に漁船が避難できる港湾整備、自衛隊常駐を訴えた。さらに石原東京都知事が尖閣購入を発表したのは、ワシントンDCに本部を置くへリテージ財団である。同財団は保守系といわれ、反共主義を掲げ政治的、軍事的な介入や支援をしている戦争屋なのである。「米国の価値観、国防の強化を掲げ米国政府の政策決定に大きな影響を持つ」(Wikipedia)なのである。彼ら親子が米国の意思を受けているのはいうまでもないだろう。日中一触即発すれば、ハゲ鷹は笑いが止まらず、バガーシィマのひとびとは、あがやーあがやーと泣くことになるのである。日米同盟強化、自衛隊配備、オスプレイ配備賛成と騒いでいるのは、アメリカの思惑を先取りし、自らの首を絞める狂気の沙汰でしかない。「凪だる世」はもう来ないかも知れない。コッタル。

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