人魚の涙

人魚の涙

石垣島のフサキビーチで開催される野外音楽イベント「トロピカルラヴァーズ」が今年でなんと5周年を迎えます。6月9日と10日に開催され、出演者はモンパチこと「モンゴル800」をはじめ、石垣島出身の「きいやま商店」や「カワミツサヤカ」、僕の大学の先輩と後輩がメンバーの「スクービードゥー」、珍しい楽器のスティールパンを操る「リトルテンポ」等々、他にも豪華な出演者が目白押しで楽しみです。そして今年のイベントのテーマはRe-Birth(再生)ということで、東日本大震災復興支援のために「子供の音楽再生基金」へ収益の一部を寄付するそうです。
 震災といえば今から241年前に、明和の大津波が八重山を襲い、多くの命が犠牲となってしまいました。そして八重山には津波にまつわる人魚伝説が語り継がれています。僕はこの伝説をもとに「人魚の涙」という曲を作り歌っているのですが、この伝説のイメージを絵本にしてCDと一体化した作品を作りたいと考えていました。あるイベントで、pokke104さんという沖縄を代表するイラストレーターが僕のライブを観てくれる機会があり、一緒に人魚伝説の絵本CDを作りたいとお願いしたところ快く引き受けてくれました。それからお互いに連絡を取りながら構想を練っていたのですが、pokke
104さんがデザインした「トロピカルラヴァーズ」のポスターに人魚が描かれているのを見て、思いついてしまいました。どうせなら「トロピカルラヴァーズ」とコラボして絵本CDを作ってみたらどうだろうかと…。その後、実行委員会とpokke104さんに話してみたところトントン拍子で話がまとまりました。「トロピカルラヴァーズ」の1週間前の6月3日にプレイベントを行う予定で、昼12時からpokke104さんによるワークショップがあり、そこで島の子供たちと一緒に人魚伝説のイメージを描き、完成した絵をまとめて絵本にするということになりました。さらに夕方6時からは世界で活躍するジャズシンガーの「akiko」さんをメインにライブがあり、その前に僕も演奏させてもらいます。そして僕の演奏と共にステージ上でpokke104さんが絵を描き、その絵を絵本の表紙にする予定なのです。
 昨年の3月11日に大津波が東北を襲い、「人魚の涙」は不謹慎だと思って演奏していませんでした。ところが『今だからこそ八重山にも大津波があったということを歌っていたほうがいいのではないか』といろいろな方からの声を受け、歌詞と曲に対する考え方を少しだけ変えて封印を解くことにしました。僕の先祖はもちろん八重山の人で、明和の大津波の被害から復興を成し遂げ、僕たちまで命をつないでくれました。まだ復興の進まない多くの被災地があり、そこで『必ず復興する』という八重山からのメッセージになればいいなと、少しでも復興への励みなればいいなと思いながら歌っています。

前花 雄良

この記事をシェアする