巨樹・巨木との遭遇(12)サキシマスオウノキ

巨樹・巨木との遭遇(12)サキシマスオウノキ

ンタナーラの上流に根を張るサキシマスオウノキ(アオギリ科)です。胸高の幹回り4メートル60センチ、樹高約15メートルの堂々の巨木です。ンタナーラとは、於茂登トンネルの南口の直下を流れて下って、底原ダムに注ぐ清流のことです。
 サキシマスオウノキは、その多くが紅樹林(マングローブ)内で観察できる高木樹種です。しかし、同スオウノキは、海岸から遠く離れた山中です。なぜこのような山中の清流沿いに生育するのか、理解に苦しみます。また、同川の中流にもスオウノキの群落があり、同巨木が群落の親木であると考えられます。
 さて、同スオウノキが根を下ろす山中の解釈です。それは、人為的な種子の持ち込みか、それとも、太古の海岸線がこの付近であったのか、独り思いはめぐります。ただ、後者の説が有力な理由として、海岸線から遠方の屋良部半島の山中や、カタフタ山の山ろくでも同スオウノキの大木が観察できることです。そして、それらの共通点が川沿いです。
 同スオウノキに遭遇したのが今から10年以上も前のことです。ンタナーラの最上流を目指した時のことです。足場の悪い川筋や滝つぼを越して程なく、右手に現れたのが同巨木です。板根の張りは、西表・古見のスオウノキほどではありませんが、これまでに石垣島で見たスオウノキでは最大です。
 清らかな流れのンタナーラです。上流には炭焼き窯跡も有り、先人たちの苦労がしのばれるンタナーラです。

松島 昭司

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