県立図書館八重山分館廃止問題

県立図書館八重山分館廃止問題
県立図書館八重山分館廃止問題

去る2月13日、沖縄県教育委員会は定例会で八重山分館廃止の決定をしました。しかし八重山郡民の理解はまったく得られず、竹富町の存続要請も審議にすら取り上げられませんでした。これでいいのでしょうか?

沖縄県立図書館八重山分館の存続を求める会 砂川哲雄さん
 
県は廃止有りきで説明会を開き、これまで何度も存続を求めてきた八重山郡民、関係団体、3市町議会の要請は無視された。説明責任も果たされていない。竹富町の同意を得られないまま石垣市が先行した条件付き同意も納得しかねる。県も市も、これは図書館行政に汚点を残すやり方だと思います。

●県の分館廃止決定と3市町の対応について、感想とこれまでの経緯について教えてください。

 大変ショックです。八重山分館廃止の決定は多くの疑問が解決されないまま強行されました。2月13日は沖縄県の「図書館行政の恥辱の日」として記憶されなくてはなりません。
 八重山分館廃止でもっとも影響を受ける竹富町、与那国町の両町が納得しない中で、県教育庁はこの問題を5年間も引きずってきた。理解を得られないから引きずってきたわけです。そして、理解を得るために今後幅広く意見を聞き論議していきたいと発言してきた。ところが、十分な論議もなかったし、また、いろんな疑問や反論がなされたにもかかわらずそれに対する回答がない。
 これまでの県教育庁の説明会や私たちがもったシンポジウムや集会においても誰からも「分館を無くしましょう」という言葉は出ていないんです。八重山3市町議会も存続の要請をしている。ところが説明会をもちましたから理解を得られなくても廃止します、では何のための説明会であったか。
 廃止有りきではありませんと言いながら、言葉とはうらはらに、実際は廃止有りきで進めてきた。とくに建物に関しては、危険家屋であると設計士を入れて耐久度テストまでやって大きな廃止要因のひとつに挙げたにもかかわらず、今度はこれを修理して無償貸付しましょうと平気で言う。
 県議会では県教育長が広く論議をすると答弁しながら論議はしない。これでは行政の一貫性がないというか、はっきり言うと、議会に対しても八重山郡民に対しても裏切り行為というか、背信行為というか、虚偽に虚偽を重ねた態度ととられても仕方がないと思います。県議会の権威さえ冒とくするものです。
 県教育庁は水面下で3市町を説得してきたわけですが、それに石垣市が、県教育庁の方針が変わりそうにないので条件付きで賛成するという、これまた不可解な、残念な石垣市の態度だと思います。今後も大事な問題がこういうふうに、県の言うことは疑問があっても納得しなくても、条件さえつければOKだと進められていってしまうと住民としては困るわけです。
 しかも、今度の問題は3市町にまたがるわけで、竹富町は存続をつよく要望している。たくさんの島をかかえる竹富町としては八重山分館がなくなると困るわけです。そういう共通理解も得られないまま石垣市が走った。そして与那国町も3市町がまとまらないならば自分たちも条件つきで賛成すると石垣市に引きずられる形になったわけですね。
 しかも、市の8項目の要請や与那国町の要請も何ら確約がとれたわけではありません。条件付きで同意するなら、まず県から確約を取り付けるのが先です。ですから石垣市長・与那国町長の同意判断は拙速だと言わざるを得ないのです。
 八重山はひとつという広域文化圏の発想がありますが、そういうなかで3市町がまとまらないで、しかもいちばん重要な竹富町の同意を得られないまま石垣市が先行した条件付き同意は納得しかねるし、これまで何度も存続を求めてきた八重山郡民、関係団体、3市町議会の存続要請などもほとんど考慮されていない。はっきりいえば無視された。
 これはどう考えても納得できないし、説明責任も果たされていない。石垣市の今回の条件付き同意は郡民不在の条件付き同意だったと批判せざるを得ないと思います。県も市も、これは図書館行政に汚点を残すやり方だと思います。

●石垣市長は「サービスが低下しないことが条件」と言っている。サービスの低下はないのでしょうか。

 資料を収集し、整理し、保存し、提供するというのが図書館サービス。まず資料の購入費がどうなるか。一時的に分館の資料をもらって、それ以降は何も購入しないのですかということですね。例えば石垣市立図書館がこれまで分館が購入していた分もカバーできれば問題はないのですが、今の市立図書館の予算状況でできるのでしょうか。
 図書館同士での相互貸借についても、現在は八重山分館から本館の資料を借りるときは無料です。しかし最近は管轄(行政)が違う図書館との相互貸借は有料化しつつある。竹富・与那国町の公民館から石垣市立図書館、県立図書館に相互貸借で本を取り寄せるときに全部県がもってくれるのかどうか、これもはっきりしていない。こういう細かいことも確認しないといけないですね。
 一括貸し出しや移動図書館の選書についても、インターネットで目録をみて選書するのには限度がある。かといって本館がやっているような一方的に選書をしてそれを貸し出すことにも問題がある。本館に比べると分館は近いですから、今までは出張などのときに来て選書していたものが、今度は簡単にできなくなる。しかも一括貸し出しや移動図書館を本館がずっとやってくれるのかどうか保障もない。
 それ以外でも、図書館では催し物などもやるわけです。そういうサービスはどうするか。石垣市立図書館が一生懸命やっていますが、そういう恩恵は竹富町・与那国町は受けられないわけですね。そこに図書館のサービス格差が生まれてくる。
 市立図書館が中核図書館として竹富町・与那国町を全面的にカバーできるかというと残念ながら現体制ではそういう状況にない。将来できるのかどうか方向性も打ち出されていない。予算の展望もない。県がみんなやってくれるという甘い幻想、過大な期待をもちすぎているのではないか。
 例えば与那国町であれば、公民館に与那国関係の資料をくれと言っていますね、そんなこと当然ですよ。問題は、図書室をつくって本をもらったけれどもその後の維持管理費は与那国町がもたなくてはならない。それができるのかどうか。一時的に予算措置があったとしても、それは一過性のもので、恒常的にやっていくのは3市町なんですね。
 竹富町はどうか。竹富町の島々の公民館にぜんぶ図書室をつくれますか、それは無理ですよね。また人員の配置はどうするのか、いわゆる図書館というのは単に資料があればいいのではなく、そこに司書がおり、レファレンスがあって利用者のニーズに応えていくわけで、そういった機能をつくれるか。その財源をどうするのか。竹富町などはできないとわかっているわけですよ。
 石垣市は将来の図書館行政のあり方について、竹富町や与那国町を視野に入れたビジョンを早急に作り直さなければならないと思います。そうでなければ、竹富町・与那国町に対するサービス低下は目に見えています。今後、県立図書館に対して過大な期待を寄せることは幻想に過ぎません。

●今後どうすればいいのでしょうか。

 私たちは八重山分館の将来のあり方について、3市町の住民にとってどういう形が望ましいか、協議会を設置して考えようとずっと求めてきたわけですが、残念ながらそういう場が設定されなかった。
石垣市立図書館も含めて竹富町・与那国町の図書館行政はどうあるべきか、予算は? みんなで知恵をしぼって話しあうことが必要だったと思います。
 これまで3市町それぞれ特殊な事情がありながらも、八重山はひとつの広域文化圏を維持してきました。そういうなかでどちらかが独走してしまうとその文化圏が破綻してしまう。将来の八重山文化圏を維持していくためにも、図書館問題は3市町の枠をこえて一緒にやってほしいですね。
 八重山分館廃止が決定された今、石垣市にはその役割を認識して、八重山3市町民における図書館サービス格差をなくすための将来の図書館像を構想してほしいと思います。
(2012年2月14日

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