石西礁湖自然再生協議会サンゴ礁基金によるサトウキビ株出し栽培への農法転換を推進するプロジェクト〈Ⅰ〉

石西礁湖自然再生協議会サンゴ礁基金によるサトウキビ株出し栽培への農法転換を推進するプロジェクト〈Ⅰ〉

 石西礁湖とは石垣島と西表島の間に広がる日本最大のサンゴ礁海域で、竹富島、黒島、小浜島などを含み、国立公園に指定されている。今年6月の石垣島うたの日は当日台風の影響で会場を児童公園に移して行われた。海と竹富島を背景にした野外ライブ会場で、ステージの後ろの海では沈殿していた赤土が台風の波でまき上げられ、リーフ内が赤く染まっていたのを多くの人が見たことと思う。石西礁湖サンゴ礁基金は全国からの民間寄付金で昔の美しいサンゴ礁をとり戻そうという活動で、八重山高校生からのバザー売上2万円を含んでいる。
 雨が降るたびに陸上から流れてくる赤土。さらにオニヒトデ連続発生、海水温上昇によるサンゴ白化現象が重なって石垣島周辺のサンゴ礁の危機が続いている。沖縄県では1995年に赤土防止条例を施行し、土木工事で赤土流出防止対策に必要な費用を事業費に含ませる(公共事業では税金から支払われる)システムにして赤土流出を効果的に減らすことができたが、農地は適用外である。現在の赤土流出の多くは耕作地が発生源で、農家にとっては最も肥沃で貴重な表土の損失となる(図1)。
 名蔵川河口に広がる湿地帯アンパルも流れてくる土砂が堆積し、陸化、乾燥化が急激に進んでいる。以前は眩しかった真っ白な砂浜も茶色にくすんでいる。河口付近のサンゴは大雨のたびに死滅を繰り返し大きく育つことができない。
 東京工業大学では平成22年より5年間9千5百万円の調査費で毎年現地観測して名蔵湾流域の赤土研究を行った。サトウキビ畑の1本の畦から始まり、個別の畑が集合した河川流域、河口のマングローブ林や地下水、サンゴ礁海域までの赤土、栄養塩の流れを実測し、シミュレーションモデルを使い現状と対策を検討した。
 アンパルの自然を守る会では現宇都宮大学大澤准教授による研究成果の市民向け講演会を一昨年開催した。グリーンベルトや沈砂池などの畑末端の処理対策施設の効果は限定的であり、畑面での発生源対策が最も効果的であることが実測検証された。
 農村地区の小学生が赤土流出をなくすには畑にブルーシートを敷きつめればいいと提案したが、そのように畑表面を植物の葉でカバーして雨の浸食から地表面を守ることが有効である。(続く)

アンパルの自然を守る会 干川 明

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