教科書問題と防衛省シナリオ

 教科書問題の教育長やら教育委員やら、市会議員の報道を見ていると、明日はなにがでてくるかと心ワクワクして実に楽しい。
 いまや産経新聞八重山支局と化し、玉津教育長の広報部と見間違えるような八重山日報。玉津教育長崇拝記事には恐れ入りました。
教科書問題を批判して投稿した高校生を〈恩師を批判した〉など発言した市会議員。〈♪誰が生徒か先生か?〉鞭をふりふりチィーパッパ。市会議員は雀のお宿の議員ですか。イナムヌ。
 沖縄タイムスによれば、八月二十三日、公民教科採択会議で、ある委員が「委員も歴史・公民の教科書を全部読むことは出来ない。調査委員(現場教員)推薦を重視するよう主張した」すると玉津会長が「見なくてもいい」と発言したという。
 こんな会長ってあり? 読みもしないのに読んだふりして?採択。委員さん、こんなことってあり? 責任持てませんと委員を辞退するのが筋だろう。それで謝礼金受け取ったのですか。議事録も公開しないしサ。公開されたら都合の悪いこといっぱいあるのかな。
「文科省は協議会が選定した育鵬社で一本化すべきだと事実上の見解を示した」(『八重山日報』10月13日)。官僚にとって会議の内容など関係ないだろう。事を早く済ませたいだけだから。それに自民党とはツーカーの仲ですからね。
 でも、そんなことがまかり通ったら未来の公民はどうなるのだろうか。お先真っ暗である。
 それにしても、どこかの二人の教育長のお行儀の悪いこと。石垣市議会ではさすがに身内からも指摘されていましたね。でも、指摘した議員は〈やっぱりお山が恋しい…〉と元の鞘? に収まりましたね。政治の世界はパフォーマンスですな~。
 さて、教科書問題にだけ目を奪われていたら、自衛隊の与那国島配備が二〇一二年度の概算要求に土地買収など十五億円を計上したという。反対運動も活溌化している。
 ところで、七月号の壺中天地で、防衛省の「対中有事シナリオ」(「産経新聞」)の危険性を指摘した。漁民を装った中国民兵が尖閣諸島に上陸し、沖縄県警が逮捕、海上保安庁も巡視船を周辺海域に展開。中国はこれに対抗して大型海艦を派遣、海上保安庁の巡視船が排除できないため、海上自衛隊の艦艇や航空機が出動。中国は日本が軍事行動を仕掛けて来たと国際社会にアピール、中国が海軍艦艇を投入し、海上自衛隊艦艇は武力衝突に発展することを恐れ、海域を離脱。その間隙を突き、中国は米空母の介入を防ぐため、宮古島や石垣島に〈武力侵攻する〉。その段階で防衛発動を発令し、艦艇や航空機を集結し、米軍も展開、陸上自衛隊部隊は奪還作戦に入るという内容であった。
 日米同盟と中国軍の軍事衝突である。八重山・宮古のひとびとが、自衛隊や米軍の奪還作戦のなかで生き残ることはほとんど不可能である。いや、人類全体が最大の危機を迎えるのである。
 ではこのような防衛省のシナリオを中国ではどのように見ているか。「日中戦争が始まれば、核戦争となり、第三次世界大戦へと拡大する可能性が高い」、「戦争が始まれば日本は尖閣諸島や東シナ海沖で中国の原子力潜水艦や精度の高いミサイルで全滅させられるだろう。さらに米国が日米安保に基づき、第七艦隊に中国を攻めさせても、中国は中性子爆弾を使えば米空母も殲滅させることができる。核戦争というパンドラの箱が開いてしまえば、米国も中国に核攻撃を仕掛け、最終的には双方が全滅して終わるだろう」(香港誌・亜州週刊10月17日号、邸立本編集長コラム「日本と中国が最終的に戦争になったらどうなるか」YAHOOニュース)。
 つまり、中国でも戦争が始まれば生き残ることはできないと認識しているのである。
 いたずらに領土問題を煽り軍隊派遣して国土を守るというのは愚の骨頂である。
 国民によって国家が形成されているのではなく、〈私たち国民は国に守られ、国の政治の恩恵を受けています〉などという逆立ちした史観によって書かれた育鵬社の『公民』教科書など害あって一利なし。玉津教育長が胸を張る様なものではない。

大田 静男

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