川平湾の仲筋側海岸線に根を張るアコウ(クワ科)です。胸高の幹周り5メートル10センチ、樹高約10メートルの巨木です。
アコウは、亜熱帯の郷土を代表する高木樹種の一つです。ところで、クワ科のガジュマルやアコウは、本来、単独ではスマートな樹形に育つ樹木ではありません。鳥や風によって運ばれた種子が、他の樹木の上部で発芽し、長い年月を掛けて下垂させた気根が、宿主を絞め殺して、宿主同様スマートな樹形に成長する樹木です。いわゆる、恩をあだで返して成長する樹木です。
さて、同アコウとの出合は、今から10数年前のことです。干潮とは言え、まだ海水が引ききらない同海岸線を北上していた時のことです。遠方に一際巨大なブロッコリーのような樹冠が目に入りました。樹冠の一部が海面すれすれに垂れ下がっています。接近して見るとアコウです。
垂れ下がった枝葉の間から中に入ると、薄暗い波打ち際の背後の斜面に根を張る巨木でした。スマートとはいかないが、間違いなく宿主を犠牲にして成長した樹形です。見上げれば、シダ植物も着生しています。
去る6月上旬、久々に同アコウを訪ねました。以前に比べるとやや海側に傾いています。重さに耐えかねてか、一部砂浜に突き刺さった枝もあります。侵食が進む海岸線は、巨木になればなるほど厳しい環境のようです。
遠くからアカショウビンの鳴き声が届く若夏の川平湾でした。