シナリオ

 ピーシャナリ、アッツァナリ(寒くなり、暑くなり)今年はおかしな気候が続いている。
 梅雨の花といわれるイジュが咲かないうちに梅雨入り宣言。昨年は年中咲いていたリュウキュウチシャノキは全く咲かない。タシロマメも同じである。
 スヌリ(モズク)も採れない。パダラー(トウゴロウイワシ)やミジュンもお目にかかれない。投げ網するにも獲物がいないのである。
 知らぬ間に自然界では何かが起こりつつあるのだろうか。
 東日本大震災の陰で八重山にとって重大なことがあまり報道されていない。
 自衛隊の先島配備計画が着々と進行していることである。壺中天地でずっと以前に中国が尖閣諸島を不法占拠し、自衛隊が奪還するシナリオ、シミュレーションがあることを紹介した。石垣島が兵站基地になることも描かれていた。
 産経新聞(五月九日)によると「防衛省、対中有事シナリオ判明、尖閣占領から奪還想定」と題して昨年十二月に策定した「防衛計画の大綱」に基づき自衛隊の警戒監視、機動展開態勢などの強化を検討するにあたり、尖閣諸島が中国に占領されるシナリオが作成されていたと報じている。
 シナリオは大別すると3つの局面で構成される。(1)漁民を装った中国の海上民兵が尖閣諸島に上陸後、中国は「漁船が難破した」と主張。沖縄県警の警察官が乗り込み、入管難民法違反の現行犯で逮捕。海上保安庁の巡視船も周辺海域に展開する。(2)中国はこれに対抗して国家海洋局の海洋調査船「海艦」を派遣。海艦は大型・高速化が進み、海保の巡視船では排除できないと判断し、海上警備行動発令により海上自衛隊の艦艇や航空機が出動する。これに中国は「日本が不当な軍事行動を仕掛けて来た」と国際社会にアピールする。(3)中国が海軍艦艇を投入する。海自艦艇などは武力衝突に発展するのを恐れ海域を離脱。警官も撤収する。間隙を突くように中国は米空母の介入を防ぐため宮古島や石垣島に武力侵攻する。この段階に至り防衛出動を発令、海、空自の艦艇や航空機を集結させ、米軍も展開する。陸自部隊は奪還作戦に入る。
 これは「防衛力の実効性向上のための構造改革推進委員会」の陸海空3自衛隊の「統合による機能強化・部隊のあり方」という検討グループが秘密裏に作成したシナリオだと言う。
 漫画の見過ぎではないかと思われるほど馬鹿げている。
 漁船が難破したと言って上陸したのであれば、救助すればいいのであって、入管難民法違反などいったいどこからこのような発想が出て来るのか。
 また、尖閣が戦場かと思えば、なんとアメリカ軍の介入を防ぐために石垣や宮古に中国軍が侵攻すると言うのである
 この侵攻を開始した段階で「防衛出動を発令、海、空自の艦艇や航空機を集結させ、米軍も展開する。陸自部隊は奪還作戦に入る」というのである。
 こうなれば局地戦どころの話ではない。全面戦争である。
 日中米が超近代兵器を駆使しての戦争となれば八重山、宮古の住民はどうなるか。いや、お互いの国民の生命財産はどうなるか。
 それぐらい米中の指導者たちは心得ているはずだ。昨年十二月、石垣市では有事を想定した国民保護条例を制定するための「国民保護協議会設置条令」が提案された。八重山戦史のなかで検討されただろうか。
 沖縄県国民保護計画(平成二十一年修正)で、離島における武力攻撃事態等への対処では、「宮古・八重山地域における避難の基本パターン」によれば、住民は空港や港から石垣島や宮古島に集結し、沖縄本島や県外に避難する計画である。こんな超近代兵器の時代に一九四四年代の「県外疎開」や「八重山郡細部計画」と同じ発想である。この程度で、中国脅威論で不安を煽り、緊張感を高めるなんて、イナムヌ。

大田 静男

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