白保集落の中に歩を踏み入れると福木並木に囲まれた屋敷があちこちにある。琉球石灰岩の石垣と緑濃い福木が、ほどよく整然さを醸し、集落の落ち着き保持している。
このような環境下で幼児児童に読み聞かせを行っている活動歴十年を数える、ゆらてぃく文庫(金嶺光江代世話人)がある。毎月二回、第二土曜日と第四土曜日の午後に金嶺さんの自宅を開放、時には庭先に敷物を敷いての読み聞かせや紙芝居を実演している。親子連れでの参加が目立つ文庫活動である。
この文庫活動は、そもそも白保村ゆらてぃく憲章推進委員会の下での活動の一環として取り組まれてきたのでものある。
三月二十三日に訪ねたこの日は、白保小学校PTA文化部(坂東公美部長)が制作した、白保方言カルタを庭先で取り合い、遊びながら白保方言に親しみ、学んでいた。地域の方言が、時代の流れと共に忘れ去られていく危機感から発案され、カルタの制作とゆらてぃく文庫活動が結びついた取り組みとなった。
この日のカルタは、固有名詞の単語を方言名で読み、絵札に描かれた植物や道具、身体の部分等の取り札を参加幼児・児童が円形になって囲み勢いよく取り合っていた。例えば、「パン」と読むと足の絵柄を取り、「ケー」と読むと井戸の絵柄、「タラグ」と言えば、おたまじゃくしの絵柄を取り合った。
このようにして失われつつある方言を次の世代に引き継いでいこうとする意気込みと熱意、粘り強く根気のいる取り組みに感銘を受けたものである。次は読み札を短文の方言で読み上げて、絵札を取り合うというカルタ大会が、実現されることを密かに期待するものである。
八重山各地に残る方言を次世代に継承していく取り組みの真価が、今後問われることでであろう。とても楽しみである。