うるずんの緑溢れるやちむん館工房「紗夢紗羅」。白保の集落からはずれ、新空港近くの畑の中に佇んでいる。紗夢紗羅では、島で実際昔からつかわれてきた民具や、全国から集めている着物、古布をつかった小物などを製作、販売している。民具はアダンや月桃、アンツクなどがつかわれていて、材料も自分たちでとりに行っている。それらの植物が円座やバッグ、ぞうりなどになる。
それぞれの作業をしているみなさんだが、12時を過ぎると工房の縁側でそろって昼食をとる。この日は美智子さんが作った豆がたっぷり入ったカレー。ふだんは各自お弁当を持参して、ここで集まって食べることが多いが、たまに、この場所が自宅である美智子さんが作ってくれたごはんをいただく。最近、食後の定番になっているのが生ジュース。この日はニンジンとリンゴだけをジューサーにかけたもの。それだけで天然の甘さたっぷりで栄養満点。毎日いろいろな野菜や果物をつかう。
大川の焼物と民具のお店「やちむん館」が紗夢紗羅の本店。もともと、オーナーの美智子さんのお母さんのトヨさんが民具づくりをしていて、1978年にふたりでやちむん館を始めた。
円座などをつくる白保の前瓦トシさんは、トヨさんのお姉さん。昔からトヨさんがつくっているのを一緒にやることもあったが、他の仕事をしていたトシさんは民具作りを本格的に始めたのは70歳をすぎてから。製作は白保の自宅でしていて、工房に来て材料を受けとり、下処理をしていく。85歳の今も眼鏡もつかわず、注文の入った円座を製作している。座布団サイズのものは1日で編み上がるという。「楽しいと思わんとやりきらんよ」と笑顔で話すトシさん。
ここで働いて9年になる徳光さんは商品の製作をしたり、やちむん館の店先にもたっている。西表さんは材料をとりに行ったり、力仕事や庭の作業を担当。この日は、広い敷地の茂ってきた草をビーバーで刈っていた。黒澤美枝子さんは美智子さんの高校の同級生。ずっと東京に住んでいたが、つい最近、25年ぶりに島に戻ってきた。今日はたまたま遊びにきて、昼ごはんも一緒に。
美智子さんは「円座などをつくる人は、最近ではお年寄りしかいなくなってきている。島にある身近なものでできるので、地元の人たちは自分でつくってみてほしい」と話す。