領土

領土

民主党政権がここまで愚劣で卑劣で、無能な
政権だとは思わなかった。
 普天間基地の海外移設、企業団体政治献
金解除、あれほど騒いだ八場ダムの再開、どれだけのエネルギーをシモジモがついやしたか。
 軽佻浮薄な総理やCIAの手先としか思え
ない外務大臣。四角四面の幹事長、消去され
たのにノコノコ出てきて虚勢を張っている
沈腐の副幹事長。彼等の国会答弁など田舎のダンパチヤーの
おっさん以下の政治談議ではないか。新鮮さなどどこにも見いだせない。自民党
以上の老獪で猜疑心のかたまりとしか思えない。
 外交もへったくれもない。信念や小沢一郎
への冷酷さを見ると義理人情のカケラなどひと
つもない。まあ、彼等が見すてられ零落する
日もそう遠くはあるまい。
 それにしても、民主党に変わる政権を悪し
き伝統と家系の自民党に託すことなど出来ない。お先真っ暗な日本の政治である。〈こんな国などやがて沈没しますよ〉と中国の首相に揶揄されて憤慨していた小林よし
のりは今やお先真っ暗、沈没寸前の日本をどう見ているのだろうか。
かって政治が腐敗と無能な季節にはクーデタ
ーが起きた。2・26事件、義憤にかられてやったという海上保安庁職員
による尖閣ビデオ流失問題など、不気味であり、
決起を促す予兆とさえ思える。
 その尖閣問題だが、前原外相などに「尖閣諸
島はわが国固有の領土」、「固有の領土」といわ
れると、腹がたち血が逆流する。
 固有、固有とイリオモテヤマネコじゃある
まいし。もともと固有の領土なんてありえない。
琉球八重山が日本国になったのはつい最近、
たかだか百余年でしかない。
 琉球王国が幕藩体制で形骸化されていたとは
いえ、それでも一国である。大政奉還どころの
話ではない。日本国家体制に組み込まれるのに
反対し、抵抗するのを軍隊を派遣して無理矢理
日本国家の一員に編入したではないか。
 だから琉球・沖縄など日本国家が固有の領土だ
なんて思ったことなどありえない。琉球は〈化外の民〉でしかなかったのだ。固有の領土、たとえば対馬や佐渡、あるいは島根、福岡、大阪を国益として他国へ割譲したり分離するだろうか。そのような歴史があったことなど聞いたことがないであろう。
 だが、日本政府は明治一三年、宮古・八重山を
中国へ割譲するとしたし、安保条約締結と同時に
沖縄は日本から分離され米軍統治下に置かれた
ではないか。
 琉球・沖縄が固有の領土なく、侵略して併合し
たと云う潜在意識があるため、国家権力の都合に
依っていとも簡単に割譲したり、分離したり、返
還させたりするのである。
 中国とて同じである。冊封体制の一員である琉
球を日本との交渉のなかで見すてたではないか。
 王府支援を訴えた脱清人たち、林世功の自決を
黙殺したではないか。国家権力から見れば個人の
死による抗議など屁に等しいのである。中国の尖閣抗議デモで琉球奪還?のビラが撒かれたというが、それこそ笑止である。
〈なんの価値もない島〉として島人が知らぬ間
に割譲されることが決定され、清国も了承してい
た島が、〈海底資源、石油がでる〉というと固有、
固有と騒ぎだす。衝突事件に乗じて国は先島への自衛隊基地配備を
加速するらしい。石垣市長はじめ石垣市議会は尖閣上陸や尖閣に基
地をつくれと叫んでいる。衝突事件でこれだけの騒ぎである、その最中に上
陸を強行したらどうなるか。火に油を注ぎ、国境の
島に緊張を生むことさえもわからないのだろうか。今にも中国が侵攻して来るかのように扇動しているとしか思えない。最も冷静に対応しなければなら
ない者たちがこのざまである。
 地球上に固有の領土なんてない。時代によって
領土なんて変遷してきたはずだ。そんなものに幻惑
されウコサベンして生きなければなければならない
人間は哀れである。国家の谷間でアリのように這い
ずり回ってしか生きる事の出来ない者たちは、もっ
としたたかに生きる道を模索すべきである。
 殺されては元も子もない。軍隊やユタまがいの扇
動はもちろんいらないのであ。

大田 静男

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