「日本の街は電柱が林立している後進国だ」とか、「ハイテクの国だと聞いていたのに頭の上に覆い被さるこの網のような電線はなんだ?」とけなされて、悔しい思いをしたことはないだろうか。それがなにワケ?と全然気にしない、無頓着な人が多いこともこの経済大国、「クールジャパン」の雑然とした都市景観の形成に一因となっている。私たちがこの島を取りまくコバルトブルーの海のすばらしさを客人たちに自慢している一方で、市街地の景観にそれほど心を配らない「鈍感さ」は今一度検証してみる必要があるだろう。島の自然を絶賛する石垣島フリークでも街のたたずまいをほめてくれることはよほど泡盛にやられないかぎり期待できないだろう。頭上に張り巡らされた電線や、無秩序な広告類、歩道にこれでもかと並べ立てられた幟(のぼり)等々が街の品格をおとしているといえないだろうか。
今バイパスの一部で電線地中化の工事が行われている。やっと国も近年無電柱化計画を策定し、欧米にはるかに遅れをとっている都市景観に力を入れ始めている。ロンドン、パリ、ボンでは無電柱化率100%、ベルリン99%となっている。日本の東京23区内の無電柱化率は7%だ。上下水道が早くから整備されたヨーロッパと単純に比較することは公平ではないが、世界第二の(やがて3位になるが)経済大国がそれに無関心であったことは批判されてもいい。それを気にしてこなかった国民もその責を担うべきだ。特に台風の常襲地である沖縄では景観の向上以上の実利がある。地中電線は架空電線の1/8の被災率といわれている。電柱が倒れたり,垂れ下がった電線類で感電したりする危険がなくなる。復旧作業の膨大な経費、作業員の人身被害が激減する。道路幅が広く使えるようになり、バリアフリー化の一助にもなる。問題は地中化はかなりのコストがかかるということだが、この国は1メートル1億円以上もかかる東京外郭環状道路を造ろうとしたり、独立主権国家としては異常な米軍への「思いやり予算」に千八百億円以上(今年度)くらいは気前よく出しているから、国民が見ざる、言わざる、聞かざるでない限り可能なことであろう。景観に関心を持つことはこの国のあり方にも目を向けることになる。