西表島のキビ刈り援農隊(6)

西表島のキビ刈り援農隊(6)

農家とのつながり

先日、キビ刈り農家でお酒を飲む機会があった。かつて援農隊に参加し、社会人になった若者が夏休みを利用し遊びに来ているとのこと。キビ刈り後に島に残っている若者も集まり、みんなでキビ刈りの同窓会になった。
 キビ刈りのメンバーが集まると、「次のキビは豊作になるかな?」とか「今年のキビ刈りは長かったなぁ」などとキビの話題に始まり、「今の仕事は…」といった生活のこと、色々な話題が次々にのぼる。たわいのない会話であっても、農家のオジィはニコニコして話を聞いている。そして「キビ刈りがあったから、この場がある」と嬉しそうに語る。キビ刈りという場は、目の前のことだけでなく、将来のこともお互いに語り合っていける空間、そして考えて行動してくれる若者になって欲しいと言う。
 キビ刈りが終わっても、それがきっかけとなり続いている縁があって、島の農家は若者にとって「帰れる家」になっている。西表から遠い都会の空の下にいても、島を想っている若者がいる。それだけでも、キビ刈り援農隊が産んだ宝ではないだろうか。
 満天の星空の下で、「たった一回の人生、楽しもうよ、やりたい事をやろうよ」。何気なく語った農家のオジィの言葉が胸に響いた。
多くの経験から生まれる言葉には重みがあった。こんな美味しいお酒を飲んだのは久しぶりだった。
 キビ刈りは決して楽な仕事ではない。けれども、農家と若者の繋がりは何物にも替えられないものになっている。農家の方々に感謝すると共に、これからもこの縁を守っていきたいと思った夜だった。

中新井 節子

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