西表・豊原集落の西方約500メートルの海岸林内に鎮座する南風見御嶽(パイミオン)です。『八重山島由来記』(一七〇五年)には記録されず、既に信仰も途絶えた御嶽です。
先月、牧野清氏の『八重山のお嶽』を参考に、同御嶽を探し当てました。ハスノハギリや雑木が密生して昼なお暗い琉球石灰岩の上に鎮座しています。イビへの石段が今も残っています。
氏によれば、南風見御嶽は琉球王府の開拓政策以前の建立で、波照間島から一帯に住み着いた村人の御嶽とのことです。しかし、その詳細は定かでなく、いわゆる「由来不相知」の御嶽です。
確かに、周辺の琉球石灰岩には、岩陰墓地が点在しています。それらが、同著に記す南風見元村のお墓でしょうか。
ところで、どうしても同御嶽の探索をと駆り立てられた理由があります。同著に記す「成長する不思議なイビの石」です。それによると、古見村からお盆にのせて持ってきた石をイビに置いたが、不思議なことにその石が次第に成長し、今では人間の体より大きくなったとの記述です。
石を抱いたガジュマルも既に朽ち、高さ約2メートルもある大きなイビの石です。これからも成長するのでしょうか、数年後の再訪を期して南風見御嶽を後にしました。