西表島のキビ刈り援農隊

西表島のキビ刈り援農隊

キビ刈り後の選択~百姓へ

七月の西表島は、台風を気にしながらも静かな夏を迎えようとしている。今月は、キビ刈りに参加したことがきっかけとなり、有機農業の道を選んだ若者を紹介したいと思う。
 彼が西表の地を踏んだのが、今から八年前になる。その後、三シーズンキビ刈りに関わったのだが、“農業”を意識し始めたのは、二度目のキビ刈りの時だという。太陽の下で汗をかきながら働くこと、それが自分にとって正直な生き方ではないかと、畑に立った時に感じたという。その後、彼は内地で約二年の研修期間を経て、有機農家として茨城県八郷町(現石岡市)で新規就農を果たした。東京で生まれ育ち、キビ刈りに出会うまで農業と関わりのなかった彼が、西表という島で感じたことが、彼の人生にとって大きな分岐点となったことは言うまでもない。
 現在は、素敵な奥さんと二人の子供に恵まれ、甘くて美味しいい野菜を生産し、平飼いの鶏を養いながら、百姓として六年目の夏を迎えている。
 そして彼の元には時期を問わず、多くのキビ刈りOBが自然と集まるようになっている。彼の生き方に賛同し、西表で感じ得たことを共有出来る場、もう一つの「西表」がそこにはあるのだ。年末になると、毎年彼の家では皆が集まり、餅つきを楽しむ。 もちろん、彼が作った餅米だ。お正月に、その餅が私達に送られてくるのが何よりの楽しみとなっている。
彼が実践していることは容易なことではないだろう。けれども、「キビ刈り」の種が実を結び、花を咲かせていることを素直に喜び、そしてこれからも応援しあえる同志でありたいと思う。

中新井 節子

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