旅立ちの季節  

旅立ちの季節  

卒業、入学、結婚

学校暦の三月は、卒業式と修了式が行われ、四月には、入学式と始業式で新年度が始まる。三月が別れの月でもあれば、四月は出会いの月でもある。ひな壇や舞台で夢を披瀝した子どもたちは、大志を抱いて巣立つ。今年も卒業式でのドラマをメディアを通して見ることが出来た。
 幼くして父を亡くし、母親や妹らを支援するためにアルバイトをし、定時制高校に通いながら、勉学に励んでいたA君。ところが、仕事中にオートバイを転倒させ、意識不明となり一時は命の危険にさらされた。がしかし、リハビリに励んだ結果、奇跡的に回復、学業を続けることが出来、同年生より遅れたが、卒業することが出来たのである。努力と苦労は、必ず報われるとの手本のようだ。
 小学校の同級生であるTさんは、若くして夫を水難事故で失い、失意の中で二人の子どもを育てた。その息子の結婚式に招かれた。息子智也君は、自らめざす美容師として、立派に成長。その技能は、会社でも指折りの腕前で高い評価を受けているという。同僚である侑子さんとの婚姻を故郷石垣島で挙げるべく帰省。ホテルでの披露宴が開かれた。
 宴もたけなわとなり、いよいよ新郎の挨拶。亡き父への思慕と育ててくれた母への熱い感謝の心情を語った。「生んでくれてありがとう。父と母のおかげで人に感謝すること、人に愛情を持つことを学んだ」。そして、「誰一人として人は同じではなく、髪の毛一本一本にもその人の個性があり、人生があることを知った。美容師としての仕事に誇りをもち、感謝を伝えることの出来る人間でありたい」と涙ながらに話を結んだ。
参席者の拍手は鳴りやまず、感動の渦が広がり、感無量の披露宴となった。

加勢本 曙

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