再びキセル

再びキセル

モノが語る八重山

先月号に続き、再び八重山のキセルである。
 写真は、西表島上村遺跡で出土したキセルである。まるで筒。これがキセル、沖縄風に言えば「ちしり」である。嘘ではない。残念ながら一部欠けてしまっているが、端に先すぼまりの穴を削って火皿とし、さらに横からも孔を開けて連結していることが分かる。横の孔に竹筒を刺し込み、火皿に刻んだタバコを詰めて火をつければ、ちゃんと喫煙の用をなす。火皿が黒くくすんだ資料が時折出てくるが、これは使われたことを示す証拠であろう。
 材質は様々で、焼き物もあれば、石を削ったものも、瓦や を削ったものもある。手軽なものであったらしく、ある調査員が試してみたところ二〇分余りで作れてしまったという。飾り気のない素朴さは、先月号で紹介した黒石川窯址のキセルと通じているのかもしれない。
 こうした筒形キセルは八重山だけでなく、宮古諸島にも沖縄諸島にも分布している。似たものは台
シナ海の島々に特徴的な喫煙具だといえるだろう。また邑でも、町でも、寺でも、城でも出土する。かつて琉球諸島のあちこちで、こんなキセルをふかす人々が見られたに違いない。
 ただ、よく見ると、地域毎に違いがあるのは面白い。写真のキセルは、表面を面取りして断面が八角形になるように作ってある。素朴な中にも、ささやかな個性の主張が含まれているのである。

石井 龍太

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