マメのおいしさを味わう

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八重山ではふだんの食事にマメ類をとても上手に使う。イモを煮るか蒸すかして、潰し、小豆を入れて大きなおにぎり状にする。まるで男の大人の拳二つを合わせたほどの大きさだ。食べるときに四割りにして、好きなほど食べる。これがウンヌイ(イモの飯、ウムニともいう)である。「沖縄の主食はイモ」というが、ウンヌイばかりが主食ではない。時代によるが、粟飯やその雑炊なども主食だが、忘れられているものに、ソテツの飯がある。黒島ではシティッチノユまたはシトゥチノユ(ソテツの飯)というが、これも小豆入りだ。波照間島では米も入れた。昨今では祝い事や法事の膳に載ることもあり、好まれていると聞く。ウンヌイも、シティッチノユも、小豆入りかどうかで味がまるで違う。食感、歯触りの妙である。そのため飽きがこない。ソテツの澱粉を固まらせたシティッチノユはまるで小倉羊羹だ。誰が考えたか、面白い食品である。ただ、毒性のあるソテツは発酵と水さらしを繰り返してアクヌキをしないと中毒になる。食べるためには高度な技術が必要だ。素人は真似をしないほうがよい。主食にマメ類が入っていれば毎日食べるので、健康にもってこいだ。
 黒島の五穀物種の一つであるクマミ(緑豆)は暑い盛りの豊年祭に、冷たいゼンザイにして参加者に配られるおいしい食べ物で、ヒラムギ(押麦)入りである。ウブマミ、ハーマミ、四角豆、ウズラマミとマメ類は多くある。味噌や豆腐の材料になる大豆も品種がある。味噌汁や魚汁、油味噌は家ごとに違い、その家の味がする。小浜島の大豆は在来の品種で、貴重な存在だ。シマ豆腐にユシ豆腐と八重山には豆の食べ物が多彩だ。堅いマメ類は料理に手間がかかるが、今やサラダに入れて食感、彩りのよさの効用か若い人の人気食品だ。
 一軒の農家で何種類のマメ類を栽培しているだろうか。その種は自家採取の種か、店から買った種か、興味あるところだ。自家採取の種は翌年蒔いても栽培できるが、近年売っている多くの種は、秋に自分で種を採って翌春に播種しても芽は出ない。1年限りに操作された種だからだ。八重山食文化研究会は、八重山に古くから栽培されていた穀物やマメ類、野菜類の在来の種を収集、保存、栽培して市民に配布し、在来作物で伝統的な食品を食べようと試みている。八重山の島々の作物を大切にする人ならだれでも参加できる。

八重山食文化研究会 増田 昭子

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