キセル

キセル

モノが語る八重山

最近、「喫煙」は嫌われものである。臭うし、煙いし、体に悪い。ごもっとも。かく言う私も禁煙派だ。
 だが東アジアの人々は、つい最近まで煙草に魅せられていた。しかもキセルで粋にやっていた。琉球も例外でなく、そのつながりは深い。日常のささやかな楽しみとして、来客の供応として、年貢の代わりとして、国王からの下賜品として、中国皇帝への朝貢品として…。神女達は今でも儀式の中でキセルを吹かす。「喫煙」が果たしてきた役割は大きかったといえるだろう。
 写真は石垣市字大川の黒石川窯址から出土したキセルである。江戸のキセルは銅や真鍮のものばかりだが、琉球のキセルは焼物が多い。そして飾り気がない。さらに面白いことに、島毎にキセルが違っている。沖縄本島で見つかるキセルはアズキ色が多く、細長く火皿は小さい。だがこのキセルは赤く、太く、大きい。モノは人の違いを映す。この島の人々が、島のキセルで煙草を燻らした証拠である。
「喫煙」は島の個性あふれる文化であり、重要な社会的役割を果たしてきた。「禁煙」活動が「喫煙」全てを否定するとしたら、それはちょっと違う、と私は思っている。

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