冬だというのに月下美人が咲いた。いつもなら九月頃には咲き終えていたが、今年はどうしたことだろうか、年末というのに咲いているのだ。うちばかりではない、知人の庭でも蕾が膨らんでいた。地球温暖化のせいだろうか。
夏、酒を飲みながら今か今かと待ちわびていると徐々に花びらが開き純白な花からは甘い香りが漂う。夜来香のような強烈な匂いではないが、怪しげな香だ。ドラゴンフルーツの花と同じだがそれほど濃厚な強い香りは発散しない。
あれほど感動しながら眺めた月下美人だが、翌日はゴム風船のように萎んでいるのを見ると、もう見向きもしたくない。美人薄命という言葉は月下美人のためにあるのかもしれないと思ったりする。
月下美人は同じ株から分けた株は同じ日に咲くという話を聞いたことがあり、株分けして一鉢あげた知人に電話をすると、やがて花が開く頃だといわれビックリした。月下美人はブラジル原産と言われるが、ブラジルや、移植した先々で同族が日を同じくして花を咲かせているとすれば、想像するだけでも胸がときめく。
植物と言えば今年はニッパヤシの種子から芽が出たことである。これまで何度か試みたがすべて失敗した。しかし、今年は星野海岸で拾ったのから畳針のような緑の芽が突き出て来て驚いた。
ニッパヤシは熱帯から亜熱帯の干潟や湿地に生え、一属一種だという。国内では西表島船浮湾や、内離島に自生し、それがニッパヤシの北限だという。国の天然記念物に指定されている。内離島で船浮要塞跡を調査中に湿地帯に生えているのを見たが、マーニ(クロツグ)に似て黄色い花?が咲いていた。果実は卵形で、海水に浮いて漂流し分布するという。若夏の浜辺に打ち上げられているのは表皮が剥がれタワシ状のものが多い。
浜辺でよく見る果実だが、不思議なことに石垣島には一株も見当たらない。目と鼻の先にある西表島には繁茂しているのにである。
私の鉢に芽を出したニッパヤシは西表産なのか、それとも黒潮に乗って南の島からやってきたのか藤村先生ではないが、やはり気にかかる。それにしてもこのニッパヤシどう処理すればいいのか迷っている。
ニッパヤシが西表北限なら、リュウキュウチシャノキは石垣島が北限である。そのリュウキュウチシャノキも今年は異変が起き、五回も花が咲いた。通常二回ではないか。小さな集合花には花の数だけゴマ粒のような種子が付くがそれもすぐ落下してしまう。何千という種子が落下しても発芽しないのである。
もう枯れてしまったが、宮鳥御嶽境内にあったリュウキュウチシャノキは何万という種子を毎年播きながら子孫を残すことが出来ず絶えてしまった。小鳥の糞から発芽するのでもないようだ。種子を薬品処理した苗を貰ったが、自然交配ではどのようにして繁殖するのかぜひ見たいものだ。
ヤエヤマシタン、ヤエヤマヤシも北限である。貴重な植物はそれだけではない。開発で次々と姿を消している。
川平湾の海岸線にはシロヨナがある。タシロマメである。クロヨナ(方言名ウカバ)が紫の派手な花を咲かすのに比べ、シロヨナは小さな白い蝶が集合したような地味な花である。
ヤエヤマネムノキも同湾の海岸近くに見えるだけである。
貴重な植物が生息する国の名勝川平湾は市民の誇る場所である。そのために景観条例を制定したはずである。ひとりひとりが、樹木や草のささやきに耳を傾けて欲しい。「文化なんて極限状態ではなにもならない」という経済学者がいるそうだが、飢えた人間に希望を与えたのがトゥバラーマだったことを八重山の人間は身を持って知っているはずだ。その精神の輝きを生み出す風土を喪ってはならない。 冬だというのに月下美人が咲いた。いつもなら九月頃には咲き終えていたが、今年はどうしたことだろうか、年末というのに咲いているのだ。うちばかりではない、知人の庭でも蕾が膨らんでいた。地球温暖化のせいだろうか。
夏、酒を飲みながら今か今かと待ちわびていると徐々に花びらが開き純白な花からは甘い香りが漂う。夜来香のような強烈な匂いではないが、怪しげな香だ。ドラゴンフルーツの花と同じだがそれほど濃厚な強い香りは発散しない。
あれほど感動しながら眺めた月下美人だが、翌日はゴム風船のように萎んでいるのを見ると、もう見向きもしたくない。美人薄命という言葉は月下美人のためにあるのかもしれないと思ったりする。
月下美人は同じ株から分けた株は同じ日に咲くという話を聞いたことがあり、株分けして一鉢あげた知人に電話をすると、やがて花が開く頃だといわれビックリした。月下美人はブラジル原産と言われるが、ブラジルや、移植した先々で同族が日を同じくして花を咲かせているとすれば、想像するだけでも胸がときめく。
植物と言えば今年はニッパヤシの種子から芽が出たことである。これまで何度か試みたがすべて失敗した。しかし、今年は星野海岸で拾ったのから畳針のような緑の芽が突き出て来て驚いた。
ニッパヤシは熱帯から亜熱帯の干潟や湿地に生え、一属一種だという。国内では西表島船浮湾や、内離島に自生し、それがニッパヤシの北限だという。国の天然記念物に指定されている。内離島で船浮要塞跡を調査中に湿地帯に生えているのを見たが、マーニ(クロツグ)に似て黄色い花?が咲いていた。果実は卵形で、海水に浮いて漂流し分布するという。若夏の浜辺に打ち上げられているのは表皮が剥がれタワシ状のものが多い。
浜辺でよく見る果実だが、不思議なことに石垣島には一株も見当たらない。目と鼻の先にある西表島には繁茂しているのにである。
私の鉢に芽を出したニッパヤシは西表産なのか、それとも黒潮に乗って南の島からやってきたのか藤村先生ではないが、やはり気にかかる。それにしてもこのニッパヤシどう処理すればいいのか迷っている。
ニッパヤシが西表北限なら、リュウキュウチシャノキは石垣島が北限である。そのリュウキュウチシャノキも今年は異変が起き、五回も花が咲いた。通常二回ではないか。小さな集合花には花の数だけゴマ粒のような種子が付くがそれもすぐ落下してしまう。何千という種子が落下しても発芽しないのである。
もう枯れてしまったが、宮鳥御嶽境内にあったリュウキュウチシャノキは何万という種子を毎年播きながら子孫を残すことが出来ず絶えてしまった。小鳥の糞から発芽するのでもないようだ。種子を薬品処理した苗を貰ったが、自然交配ではどのようにして繁殖するのかぜひ見たいものだ。
ヤエヤマシタン、ヤエヤマヤシも北限である。貴重な植物はそれだけではない。開発で次々と姿を消している。
川平湾の海岸線にはシロヨナがある。タシロマメである。クロヨナ(方言名ウカバ)が紫の派手な花を咲かすのに比べ、シロヨナは小さな白い蝶が集合したような地味な花である。
ヤエヤマネムノキも同湾の海岸近くに見えるだけである。
貴重な植物が生息する国の名勝川平湾は市民の誇る場所である。そのために景観条例を制定したはずである。ひとりひとりが、樹木や草のささやきに耳を傾けて欲しい。「文化なんて極限状態ではなにもならない」という経済学者がいるそうだが、飢えた人間に希望を与えたのがトゥバラーマだったことを八重山の人間は身を持って知っているはずだ。その精神の輝きを生み出す風土を喪ってはならない。