「辞書を読め」

辞書から教わったもの

母親が本が好きな人間なので、小学生の頃は毎週のように図書館へ行き、いろんな本を借りては読書ノートをつけたりしていた。それが、テレビやら部活やら友達との遊びの方がおもしろくなり、読書からは足が遠のいたのはいつ頃からだろうか。
『読書は大切、読む習慣を身につけましょう』という授業のとき、クラスの誰かが「どんな本を読めばいいかわからない」と先生に質問した。私もうんうん、と思った。その時の先生の言葉である。
「辞書を読みなさい」。
 まだ幼い私たちは、辞書とはわからない言葉を調べるときだけに使うものだと思っていた。しかしその先生曰く、辞書ほどおもしろい本はないのである、とのこと。
 確かに、少し視点を変えて読む辞書はおもしろかった。知っている言葉であっても、意味を聞かれるとどう言い表わしていいかわからない。それが的確に表現されている。知っていると思っていた言葉の意味が、本当は違う意味だったり、聞いたことのない読み方や、うっとりするような漢字で表記されている色や季語や花の名前。はたまた美味しそうな言葉が連なっているページ、例えば焼き芋・焼き魚・焼き鳥・焼き肉・焼き蛤・焼き豚など。
 読む楽しさと言葉の奥深さを教えてくれた、あの先生に感謝。読書の秋の季節は過ぎたけど、学生時代に使ったすっかりくたびれた辞書をひっぱり出してきて、パラパラめくってみる石垣の冬も、なかなかおつなものではないでしょうか。
 「やいま」に筆を寄せるにあたり、辞書をめくることが多かったこの一年、言葉の大切さを改めて学んだ一年でもありました。

金城 未来

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