前楚 和秀さん

前楚 和秀さん
前楚 和秀さん
前楚 和秀さん

人口1647人。車でまわれば一周一時間もかからない島。高校のない与那国では、中学を卒業するとみな一度は島を出る。戻ってくる人は少ない。しかし、帰ってきた若者たちがいる。日本の最果て、自立を選んだ国境の島、与那国。故郷のために、島の発展のために、なにを思い生活するのか。島の若者にスポットをあてる。 ※人口は平成20年9月1日現在

前楚 和秀(まえそ かずひで)さん
1976年11月2日生まれ。祖納西2組出身。農高→東京農業大。卒業後、帰島。帰島後すぐ、与那国馬保存会事務局を引き受ける。JA勤務、専業農家を経て、現在は町役場臨時職員の傍ら畜産を営む。

≪与那国馬をこれからも守っていきたい≫
 日本在来馬の『与那国馬』の保存活動をこれまで続けている和秀さん。「在来馬の中でも小柄な馬だが、多様な能力を持つ与那国馬を守っていきたい」との想いで事務局の運営に携わっている。幼いころから農業をしていた祖父のそばで育ち、牛や馬と触れ合ってきた。「いろんなことを教えてくれた祖父には感謝してます」と微笑む。
 与那国馬は今、100頭前後いるといわれ、それくらいで推移していくのがちょうどいいとのこと。保存会としては今後、これまでとは違った長期的な計画で、与那国馬の”保存“の話が進んでいるところである。

≪乗馬体験はもちろん続けたい≫
 祖納にある『与那国馬ゆうゆう広場』も保存会が運営をしている。これまでは体験乗馬をメインで行ってきたが、現在は見学だけとなっている。乗馬体験ももちろん続けたいが、厳しい現実もある。
 畜産も営む和秀さんは「畜産情勢は今かなり厳しく、畜産農家は一番苦しい時期にあります。踏ん張って牛を守っています。八重山は畜産王国。いち早いセリ価格の回復を望んでいます」とも話す。
  和秀さんは「今、台湾との交流の話しが進められていますけど、それもいいですけど、僕はそれよりも、本土の人たちに来てもらいたいと思っているんです。同じ日本に、せっかくこんなに素晴らしいところがあるってことを、もっとわかってもらいたいですね」と話した。

≪次の世代にも島のすべてを残してあげたい≫
「これからは家族を守り、地域に貢献できることを目標にしている。今は一生懸命働くしかない」という。自分は、島に帰ってきて、島のよさをより実感している。今の子どもたちが帰ってきた時にもそう思ってもらえなければ。将来島の子どもたちが戻ってくる時まで、次の世代まで、子どもたちの故郷である島のすべてを守っていきたい。

笹本 真純

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