前盛 美和(まえもり みわ)さん
1978年11月22日生まれ。祖納東1組出身。商工卒。医療事務の資格をとるため上京。資格取得後、沖縄本島でのアルバイトののち、23歳で帰島。建設会社の事務を経て、去年より、与那国町伝統工芸館での事務局を務める。
「みわさーん」遠くから美和さんを呼ぶ声。「はーい」。島外の人間にはまったくわからない方言で話してくる年上の人たちに、ひとつひとつ答えていく美和さん。
≪帰ってきて正解でした≫
話し始めてすぐ美和さんが言ったのがこの言葉。その”正解“だと思う一番の理由は子育ての環境のよさだという。自分が育ったこの与那国の自然の中で自分の子どもの子育てができることはもちろん、「親と一緒に住んでいるので、助けてもらっていて、とてもありがたいです。あと、地域全体で子どもを見てくれるのがいいことだっていうのが、都会に出てわかりました」という。
島に帰ってきてから興味があった織物。織手を募集していたところに、やってみようと思い応募し、それが、「なんだかんだ」しているうちに、織手ではなく事務をやることになったという。今は、島内に住む、与那国織の織手58人の女性たちと取引先との間での対応をひとりでしている。
≪責任を感じています≫
島の伝統的なものを自分がつないでいるという実感は?という問いに対して、「すごくあります。プレッシャーというか、責任を感じています」との答えが。
与那国織の反物は全国に流通している。与那国の伝統的な織物を全国に広めたい。けれど、小物が買えるのは島内のみ。今、織物業界は全体的に低迷傾向にあると言われているが、そこだけは島の組合の譲れないところ。量産はしたくないし、価値は下げたくない。
≪この仕事に就けて本当によかったです≫
「まだ、染め、織りとも経験はないけど、今後は勉強したい」と話す。見ていておもしろそう。そして、島のために、島の伝統を学んで、受け継いでいきたいという思い。「めぐり会えたというか、たどり着いたというか、いい仕事に出会えました」。ふたりの娘のうち、小学二年の二女が織物にすごく興味を示していて、今から「将来は織手になる」と話しているという。「自分のあとも、どんどん若い人が継いでもらいたい。それが自分の娘であったらなおさら嬉しいですね」