田頭 瑠都さん

田頭 瑠都さん
田頭 瑠都さん
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田頭 瑠都さん

人口1647人。車でまわれば一周一時間もかからない島。高校のない与那国では、中学を卒業するとみな一度は島を出る。戻ってくる人は少ない。しかし、帰ってきた若者たちがいる。日本の最果て、自立を選んだ国境の島、与那国。故郷のために、島の発展のために、なにを思い生活するのか。島の若者にスポットをあてる。 ※人口は平成20年9月1日現在

田頭 瑠都(たがみ るつ)さん
祖納西2組出身。八重高→文化女子大学家政学部服装学科。24歳で帰島。06年に『プレタポルテ衣瑠都(きると)』をオープン。

≪中学校の制服をデザイン≫
 開店3年目を迎えた『プレタポルテ衣瑠都』はJTAの機内誌『コーラルウェイ』や雑誌『おきなわいちば』に紹介され、島外からも注目を集めている。冬の学生服の納品間近で、製作に忙しいという時にお邪魔をしてしまった。
 衣瑠都は島内の2校の中学校の女子の制服を製作している。以前は島外の業者が採寸に訪れ製作をしていたが、生徒数が減り採算がとれないため、島内で仕立てを営む衣瑠都に学生服縫製の話が舞い込んできた。数年前、自身が着て通学した制服を自らの手で創りあげるという夢のようなチャンス。断る理由はなかった。
 いろいろな事情が重なりデザインを変えることになり、コストを抑え、快適な制服の製作という条件で学校、保護者と何度も話し合いが行なわれた。衣瑠都が2校の制服製作をはじめて3年目を迎える来年は、生徒全員が新しいデザインの制服を着る。採寸から縫製、納品と現在の流れができるまでたくさんの人に助けられたという。瑠都さんは「身の引き締まる思いです」と嬉しそうに話す。

≪衣瑠都の仕事は与那国だからこそ成り立つ≫
「シャツ1枚仕立てるのにじっくり時間をかける衣瑠都の仕事のスタイルは、都会では通用しないと思う。この島で生まれ育った私だから島好みの今のスタイルになった。与那国だからこそ成り立つ仕事なんじゃないかな」。完璧主義だという性格は1ミリ1針にこだわりすぎて、納品日の前日は徹夜が当たり前だという。「納品したときに一緒にたくさん喜びたいから」と笑う。
 衣瑠都は洋服の仕立てが主だが、直しものなども受けている。鞄やネックレス、スダレやトランポリンの補修など、意外な注文もくるという。
「縫製に入る前にお客さんとじっくり会話を重ねることにこだわるのは、お客さんの想いをできるだけ形にしてあげたいから」。
 島では、「明日の運動会に…」とか「今日の午後使いたい直し物」など急な注文は日常茶飯事。特にイベント前は徹夜覚悟で構えなければならないという。
「いろんなリズムに対応できるのが衣瑠都のスタイル。衣瑠都に行けばどうにかなる!!という期待に応えたいだけです。だから常に余裕あるスケジュールを組んでます。『短時間でお届け!!早い安い』が勝負の都会とはちがいますよね」。
 衣瑠都で仕立てた服を着ている人を見かけたり、中学生が制服のボタンを付け替えにきたり、そのたびにうれしくなって顔がゆるんでしまうという。「この喜びがやみつきになるんです」。
 仕事の合間をぬって、走ることを日課にしている。完璧主義はここでも発揮し、毎日走ることにこだわって、11月8日に行われた、与那国一周マラソン大会で、24km女子の部で初優勝を果たした。

≪強い『気持ち』や『想い』に触れることが大好き≫
「衣瑠都の学生服を3年間着たら、それを後輩に譲って、もちろんサイズや体型に合わないところは衣瑠都で直して、いろんな人の想いがつまったものを後輩に着つないでいってくれたら嬉しい」と話してくれた。造るものひとつひとつ、それぞれの想いがこもった服でありたい。

笹本 真純

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