座談会・まず与那国島の未来に何が必要か話し合った

座談会・まず与那国島の未来に何が必要か話し合った
座談会・まず与那国島の未来に何が必要か話し合った
座談会・まず与那国島の未来に何が必要か話し合った
座談会・まず与那国島の未来に何が必要か話し合った
座談会・まず与那国島の未来に何が必要か話し合った
座談会・まず与那国島の未来に何が必要か話し合った

2004年10月、石垣市・竹富町との合併の是非を問う住民投票が行われ、与那国島は自立の道を選んだ。台湾との交流、経済的な自立、介護問題…自立へ向かう過程には様々な課題が足元に転がっている。合併の是非を問うてから2年後の2006年、与那国島の未来を考える。

―田島 
嶋仲自治公民館の会計をやっております、田島政之です。6年前に那覇から島に帰ってきました。黒潮の流れと同じように与那国から北へ栄養分をどんどん流していきたいと思います。
―大嵩 
与那国町議会議員をしております、大嵩長史です。本業は畜産をやっております。現在は島の中で職が少ないということが一番の不安材料です。田島さんも関わっている長命草などいろんな分野で産業を盛り上げていけたらと考えています。
―大朝 
役場の臨時職員として働いています、大朝春奈です。与那国に帰ってきてまだ3年なので、島のために何をしていいのかもわからない状態ですが、先輩方と一緒に、できることがあれば協力していきたいと思っています。
―小嶺 
与那国町議会議員の小嶺です。8年前にUターンしてきました。本業は畜産をやっています。今進められています自立ビジョンの中には、畜産の飼料供給の話などもでてきておりますので、今回はそれを中心に話ができればいいなぁと思っています。

≪まずは足元交流から≫
―大山 
では自立ビジョンの策定班である田里さんから、台湾との交流等も含めたお話をまずお聞かせ下さい。
―田里 
個人の自立、地域の自立、そして与那国全体が自立するためのポイントとしましては、2つあります。1つは住民自治の確立です。地域住民が一体となった協働の町づくりが必要です。2つ目は台湾に近いという地域特性を生かすこと。これは現在まで生かされてこなかった分野です。台湾との自由往来については、国境交流特区構想を提案しましたが、残念ながら対応不可能との回答でした。与那国が尖閣諸島や竹島のようにならないよう、国益の視点から考えてもらいたいですね。島民が「国境の島守」として夢を持って定住できるよう、これからも国へ要求していきます。
―大山 
2000メートルの滑走路が18年度に完成しますね。
―田里 
島の活性化には空港と港、この2つのインフラをどう使うかが重要なポイントです。基本はやはり台湾との自由往来。もう一つは本土との直行便でしょうね。これが実現できれば、与那国は国境の都市として自立へ大きく変貌するでしょう。
―大山 
では「交流」をキーワードにしまして、大嵩さんはどのように考えていますか。
―大嵩 
自分は地域交流に力を入れたいですね。特に観光客との交流が少なくなったと思います。援農隊が盛んな頃はいろんな交流が生まれていたので。これを復活させて島外者と住民との輪を作るというのが国内交流の中では一番重要だと思います。そこから国外の交流にも広げていけると思うんです。
―大山 
田島さんはどうお考えですか。
―田里 
外との交流という前に、こういう縁側での話し合いの場が島にないんですよ。会議室や飲み屋ではなく、こういう縁側交流が普段から行われることが必要だと思います。
―大山 
春奈さんはどうですか。女性の視点から見た交流について何かありませんか。
―大朝
女性の会合が少ないというのはあります。それから田島さんが言うように、地域交流がないですね。自分が小さいときは地域の人はみんな知っていたんですけどね。台湾との交流も大事だとは思うんですが、まずは足元から交流を持つべきだと思います。
―小嶺 
僕が10年前に教育実習で島に帰ってきた時、子どもたちに「島にないものはなんですか」というアンケートをとったんですが、答えの中に「知らない人」と出てきました。つまり、住民はもちろん島外者でも、あの人は観光客、工事関係の人、と子どもたちはきちんと把握していたわけです。しかしその子たちが中学生になった時、同じようなアンケートをとりましたが、「知らない人」という答えは出てきませんでした。人口の増減があったわけではないんです。しかしコミュニティが変化してきた。与那国ではわずか10年も経たないうちに、隣の人が何をしているのかわからない状況になっていたんです。与那国町が合併問題を突きつけられたことは、住民が島のことをもう一度見直す良い機会だったと思います。知らなかった隣人も、自立を目指す島民として支え合っていく気持ちが生まれました。しかしこれから先、島を引っ張っていく人材が少ない。その育成が必要です。
―大山 
まとめますと、足元交流の場が求められるわけですね。
―大嵩 
現在の与那国では島外からのお嫁さんが多いんですが、例えば方言が強くて隣人どうし話ができなかったり、コミュニティが少しずつ閉ざされているのかも。なかなか溶け込めないお嫁さんたちもいる。ここ最近は島外のお嫁さんを支えようといろんな集まりがあるようですが。
―田島 
島の人が楽しんで物事をやっていれば、島外からのお嫁さんだって自然に入ってきてくれるんですよね。先週、初めてバレーボール大会に参加したんですよ。これの二次会なんかすごく盛り上がって。島の人が楽しんでもっとこういう場を増やしていけば、みんな気持ちが変わると思うんですよ。
―大山 
僕も島の人間だからわかるんです。我々島人も、もっと開放的にしていかなければなりませんね。ここでまず一つ確認をしましょう。もっと足元交流をしていきたいということは皆さんの共通のご意見ですね。ではもう一歩話を広げて、台湾との交流について話を進めていきましょう。まず、台湾との交流を行政の立場から、田里さんお願いします。
―田里 
現在、全国都市再生モデル調査委託事業において、台湾交流部会と観光部会の中で議論していますが、まずは与那国町役場に与那国花蓮市事務所、花蓮市役所に花蓮市与那国事務所の看板を揚げることが必要だと話しています。もう一つは人材ネットワークを構築するために、「大人のホームステイ」を実施する。それから台湾の学生は高額な旅費をかけて外国に修学旅行に行っているそうなので、与那国を拠点として先島、沖縄を旅行してはどうかということ。併せていろんな議論を進めています。
―大山 
ビジョンはビジョンとして大切ですが、草の根的な交流は地域住民一人一人が自覚して取り組む課題だと思うんです。その場合に、台湾との交流をどのような切り口でやるのか、田島さんはどう思われますか。
―田島 
まずは地元の人間が島を知ることですね。そして台湾の曲を一曲でも覚えること。これだけでも違ってくると思います。先ほどの修学旅行に関しても、地元の人間が島のことを知らないと受け入れられないですよね。

≪与那国にしかないものを生かした特産品づくり≫
―大山 
ちょっと皆さんにお聞きしたいんですが、日本、または世界で与那国にしかないものはなんでしょうか。60度の酒とか。
―大嵩 
一番は島の民謡じゃないですかね。
―田島 
棒術。これは独特で世界に誇れるものですね。それから与那国シバ。
―田里 
長命草ですね。
―小嶺 
海底遺跡、冠婚葬祭のやり方なんかも違いますよね。
―大山 
それらをどのように生かしていくか。現在長命草の生産をやっていらっしゃる田島さんは、なぜ長命草に着目したんですか。
―田島 
長命草は塩に強い、風に強い。与那国に持ってこいなんです。これからは長命草で羊羹などの特産品を作っていこうと考えています。そしてお年寄りも関わっていけるような仕組みを作りたいです。
―大山 
パッケージなどはどこが作るわけですか。
―田島 
それはまだこれからですね。
―小嶺 
登録商標はすでに商工会と各企業がとっています。
―大山 
生産農家はどのくらいいらっしゃるんですか。
―田島 
約16農家ですね。
―大山 
長命草の販売方法はどのように考えていらっしゃいますか。
―田島 
今与那国では原料の生産と原料を半乾燥させるところまでやっています。
―小嶺
長命草はお茶やそばなど、地元で加工して販売しているものもあるんですよ。ただきちんとしたラインに乗っけてやっているのは、原料の出荷ということだけですね。
―大山 
60度のお酒というのは今現在日本で与那国にしかないですよね。もっと付加価値を高める方法はありますか。
―大嵩 
あると思います。ただ60度のお酒というのは、沖特法(沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律)の中の、また更に与那国だけに認められたものではあるんですが、半永久的に与那国だけに認められるかということは、今後どうなるかわからないですね。ただ、クバの葉で包まれている民芸風の形、あれは付加価値が高いと思いますね。
―田里 
60度の酒は今でいうなら特区ですよね。これは守らないといけないですよ。
―大山 
これは永久的に守るべき、訴えていくべきですよ。今クバの話がでましたが、もっと付加価値を高めるために内容量を減らして与那国の陶器に入れたりすることも考えていいんじゃないでしょうか。
―田島 
立神岩の形とかにしてね。
―大山 
そういうのもいいね。とにかく付加価値を付けること。与那国らしさをもっとアピールして、もちろん特区は守っていくことですね。
―田里 
琉球大学の教授とお話したのですが、与那国の米で泡盛を作ってはどうかという提案がありました。
―大山 
とてもいいですね。与那国の米で与那国の酒を作り、与那国の水をセットで売り出すというのもいいと思います。

≪与那国馬を活用しよう≫
―大山 
話は変わりますが、与那国馬は今後どのように活用していくのですか。
―田里 
馬はおもしろいですよ。いろいろな活用・メニューができますから。
―大山 
与那国馬の活用方法は、ふれあい牧場とか観光に関わるものがあるわけですけども、もっと活用の仕方があると思うんですよね。
―田里 
馬の活用というのは滞在型観光につながると思うんです。ダイビング・ダイリングという言葉を使っていますが、天気が悪くダイビングできないときにはダイリング(馬)で楽しむとか、家族連れの旅行者の場合、大人はダイビングや釣りに、妻・子は乗馬体験とか、馬での島巡り観光もやりたいですね。アニマルセラピーもありますね。都会の人は非日常的な体験に魅力を感じていますから。いろんなメニューと結びつけての滞在型観光に大変有効だと考えています。
―大山 
馬の活用は大切ですよね。与那国では里馬制というのは考えられていますか?
―小嶺
足長会というのはありますね。
―田里 
ファンを募るオーナー制のようなものです。
―大山 
それは非常におもしろい制度ですね。資金がないのが現状ですので、外部から資金を集めるというのは大切だと思います。
―田里 
馬を使った活性化を比川で考えています。数年前から比川小学校では馬を活用した総合学習を展開しています。比川小学校の生徒たちは乗馬がうまいんですよ。

≪漁協を中心とした地域づくり≫
―大山 
海底遺跡は有名なので大切な観光資源だとわかります。では海産物の加工場などの計画はありますか?
―田里 
ないです。しかし現在の漁協長は非常に前向きで、そういったことを是非やりたいと言っていました。
―大山 
ではもう少し住民の側からの後押しがあればいいわけですよね。
―田里 
要は集落単位で活性化しなければならないんですよ。公益法人である漁協が中心となって男性は獲る、女性は加工するで、うまく役割分担した仕組みができるといいですね。
―大山 
やっぱり地域の人たちが頑張らないといけないですよね。
―田里 
地域を引っ張っていくのは公益法人である漁協ですよ。漁業集落として特異性のある集落づくりを新組合長に期待したいですね。
―大嵩 
干物なんかももう少しうまく利用してほしいですね。需要もあるんだから増産してほしい。
―大山 
ターミナルに降りて目にしたんですが、「たこめんたい」という加工品がありますね。大きな瓶につめて安く売っているでしょう。もったいないですよ。もう少しパッケージを工夫すると付加価値も高くなると思うんです。行政を頼ってはだめですよ。施設がないからあきらめるというんじゃなくて、いろいろ手立てはあるわけですから。

≪ハーブの活用≫
大山 
与那国でハーブをやっていらっしゃる方はいますか?
―田島 
ハーブ研究会はありますね。
―田里 
石垣で嵩西洋子さんなどがやっていますよね。
―大山 
実は今日皆さんに持ってきたものがあるんですが、これは和紙に香水を含ませたものなんです。今これが飛ぶように売れています。名刺入れに入れてもいいし、財布に入れてもいい。月桃やハーブをこういうものに利用してはどうでしょうか。
―田島 
長命草でもいいんですよね。
―大山 
長命草を和紙の中に入れるんです。和紙はここではできないから原料を送って商品にしてもらう。また交流事業として、台湾でこれを作ってもらって与那国で売るということもできます。
―大嵩 
これと工芸館での花織をドッキングさせて売り出すこともできますよね。
―大山 
そうです。一つの参考までにということでご紹介しました。

≪自立ビジョン構想をより具体的に実行していこう≫
―大山 
クリアランス船というのはどうなっていますか。
―田里 
もちろん考えています。中国対岸には石垣島よりも与那国が一番近距離にあります。この地域特性は大変有効と考えていますが、開港できないとこれもできない。
―小嶺
クリアランス船の必要性というのは僕が説明したいと思います。穀物飼料とクリアランスという話をします。沖縄自体が元牛市場ですよね。しかし肥育ができていない。単純に言えば飼料が高いからできないんです。現在の穀物飼料の流れは、オーストラリア、アメリカを中心に、東京の晴海から鹿児島の志布志に来ます。そして沖縄本島、石垣、与那国と渡ってくるんですが、輸送コストが国外での一区間よりも、国内での一区間の方が高い。そこで自立ビジョンと結びつけて、台湾、中国が隣にあるじゃないかと。そもそも与那国から中国はすぐ隣にあるのになぜ全国一律のルートをとっているのかというのが疑問なんですね。僕は鹿児島以南全体を肥育産地にしたいんです。国内でわずか16%しか和牛が食べられていないと言われていますが、こういうルートを持ってコストダウンした安全で安い牛を作ることによって、確実に伸びると思います。
―田里 
の小嶺さんのお話は中長期ビジョンで非常に大切なお話だと思います。ちょっと観光の話になるんですが、今日我々は久部良に行ったんです。そこに立派な碑はあるんですが、周囲に草がたくさん生えていました。あそこを整備して、例えば移動パーラーでビールを売るとか。そういったことも考えてみてはどうですか。観光発展といっているのに整備されていない。それから僕は与那国島で旅行会社を立ち上げるべきだと思うんです。みんなで資金を出し合って、島から情報を発信する。そしてその情報の中の一つに、インターネット上での与那国商店を立ち上げるといいと思います。
―大嵩 
これは自立ビジョンの構想の中にも入っていますね。
―大山 
構想だけじゃなくて、実行することが大事です。ビジョンの中でお酒やさとうきびなどを六大特産物としていますね。そういうものをすぐに売り出す。

≪地産地消の促進≫
―小嶺
自立するために何が必要か、財政破綻の危機を乗り越えることです。一つは外貨獲得、そのための商品開発、販売ですね。それから地産地消を目指す。島からなるべくお金を出さない。子どもたちの給食もそうです。最初の話に戻るんですが、地元内での交流がないということ。自分の子どもとさえ忙しくてなかなか話ができないんです。やはり貨幣経済に慣らされてきたからですね。これを昔の状態に戻すためには地産地消だと思います。
―大山 
そうですね。1700名の島民が毎日200円のものを買うと、1年で1億2千万にもなるんです。それだけの金が島に入る。小さなことですが、こういう仕組みをどうやって確立するか、非常に大切なことだと思います。それから先ほどのネット上での与那国商店のお話ですが、ここで得られた売り上げの2%でもいいから人材育成基金にする、台湾との交流基金にするといいですね。
―田里 
やっぱり交流の中で人も物も生まれてくるんですよね。合併をしなかったことで今が一番苦しい時期です。でもこれをチャンスと据えることが島を大きく変えるんですね。地域の皆さんにはこれまで以上に自立に向けた起業精神に早く目覚めてほしい。また、行政は町財政を破綻させないこと、そういう行政運営が必要ですね。

≪介護モデルの島に≫
―田島 
僕が一番心配しているのは介護保険です。キビ作って牛作って、でも家の人が共倒れしたらどうしようもない。介護保険ができてから、島から人がどんどん出て行ってますよ。
―大嵩 
介護保険制度が入ってきて、使わないと損という考えが出てきた。働くより引退しようとみんな考えだしたわけです。その結果介護保険料が上がってしまった。それで考えているのが、お年寄りの家で民泊をしてもらおうと。お年寄りが交流から生きがいを感じて戻ってきてくれればと考えています。
―田島 
介護は地域でしかできないです。行政では無理があります。元々地域にあったものを、制度ができたから今は行政がやっているだけです。
―大山 
介護という問題は予想以上に膨らんできていますね。ですから今現在では介護保険をやめて医療保険に戻そうという意見も出てきていますよね。
―田里 
介護保険税、国民健康保険の二税について、今後は県単位で考えるべきですね。この二税は小規模自治体の財政を一番逼迫させていますからね。沖縄県は島嶼県土に即した構造改革をやるべきです。その中で全県民での世代間の相互扶助制度にすべきだと思います。
―小嶺
中学生が質問をしてきまして、「昔はおじいちゃんおばあちゃんが家で死んでいたのに、最近は家で死んだなんて聞いたことがない」と。これはやはり貨幣経済にどっぷりつかってしまった結果です。おじいちゃんおばあちゃんを家で看れないから施設にお願いする。僕は島の中で介護のモデル的なことができないかと思っているんです。
―大山 
地域の問題は地域でこなしていくということですね。与那国島は自己完結していこうという共通認識を島民が持たないとだめだと思いますね。
―田里 
ここで提案したいんですが、今与那国ではこういった会議がないですよね。こういう話し合いを続けていきましょう。
―小嶺
収穫祭というのをやろうとJAの青壮年部で話したんですけど、それを持ち回りで、我々を含め八重山全体の交流でやれれば、僕はおもしろいと思うんですよ。
―田里 
離島はもちろん明石や野底地区も、青年たちを集めて話し合いをしましょう。いろいろ交流を持つべきですよ。まだまだ話はつきませんが、今日はここで終わりたいと思います。皆さんお集まりいただきありがとうございました。

≪そして大事なことを3つ挙げた≫
①地産地消の促進
・長命草やハーブなど与那国特有の農水産物を利用した特産品作りを強化する
・既存の特産品の付加価値を高める
・財政破綻の危機を町民が共通認識し、家庭の台所から学校給食まで地産地消を心がける
②まずは足元交流から
・観光客との交流の場を増やす
・島人どうしの縁側交流の場をつくる
・女性の会合の場を増やす
・島外出身のお嫁さんをサポートし、交流の場を増やす
・八重山地域間の交流の場を設ける
・交流からお年寄りの生きがいを見出し、島での生活に安心と喜びを感じてもらう
・人材育成を視野に入れた交流事業を行う
③観光の促進
・与那国特有の観光誘致
・台湾との交流事業の推進
・比川地区を中心に、与那国馬の活用を促進する
・既存の観光施設の充実と景勝地の整備
・インターネット上で「与那国商店」を立ち上げる
・地元の旅行社を立ち上げる

≪翌日、与那国町役場を訪問し、外間守吉町長が描く今後の与那国ビジョンをお聞きした≫
―外間 
昨年度、僕は辺境化をなくそうということで一生懸命取り組んできたわけですが、志半ばにしてお亡くなりになった尾辻町長の自立ビジョンをどう発展、推進していくかということ、そして地域とどう混成させていくかということが非常に大きな課題でした。我々が考えている大きな課題は、まず昭和22年の1万2000人の人口を再現できないかということ。それともう一つは、やはり台湾との関係。台湾側も、我々が本当に真剣であるならばビジネスをしたいといっています。本土の企業からも計7箇所、企業誘致をしたいと声があがりました。これらの立ち上げの基準ttなるものを我々がどう位置づけし、誘致するかが課題です。以上のようなことを構造改革特区として申請したわけですが、まず船舶の往来について、これはノーという答えでした。船舶往来については非常に厳しい状況にあると。北朝鮮などの船に対して規制を強化している状況の中で、与那国だけを緩和することはできないということでした。それから祖納港を開港して外国船舶を往来させる、そして港のC.I.Qを常駐させようと働きかけているわけですが、これも実績がないからだめだと。しかし実績がないからこそ往来船就航という実績を創れるんじゃないかと主張しているんです。構造改革特区に関しては以上のように一応答えが返ってきています。ただ、本来の小泉総理が言っていた構造改革特区は、町の発展、島の発展をさえぎっている制度を取り払いますよということだったはずです。それが本来やるべき要件の緩和等を放棄しているように感じています。これらを踏まえて、私は外務省の無用論をよく言うんですが、外務省が国境線を引いた、人の往来を阻害した、その結果与那国は1800人弱の人口になった。全て外務省です。日本は国境線における国策がないんです。将来、北海道の北方領土が返還されたとして、日本の法律で制度を作ってしまうと、必ず暴動が起こりますよ。今まで物資も習慣も全てソ連だったものが、返還して明日から日本の領土ですよとなった時、今我々が訴えていることをこの北方領土の島々にも強いるようなことをしたら、僕は許さないよと外務省に言ったんです。僕たちが今訴えていることをテストパターン、マニュアルとして実行すれば、北方領土が返還された時に島民の生活もいい形での返還がスムーズにできるのではないかと思います。
―田里 
では、与那国島の観光についてですが、町長のご意見をお願いします。
―外間
観光も大変おもしろいんですが、自立ビジョンの中で台湾との関わりの話が出てきていますよね。台北支局長、東京毎日新聞の支局長、台湾の中華協会の理事長を含めてお話したところ、台湾の方は与那国に対して「与那国は台湾の一部の田舎」という考えを持っているとおっしゃっていました。与那国に巨額の設備投資を考え、あらゆるビジネスを展開したいという意見を持った方に与那国の魅力は何かとお聞きしてみたところ、身近にあるレジャー施設は与那国しかない、しかも与那国は日本の一部という魅力があるということでした。今台湾との関わりをどう展開して進めていくかということが一番の課題です。再来年には台北から台南まで新幹線が通ります。4時間で行きますね。しかしそうなると、現在台湾にある航空会社7社の内、4社は潰れるだろうと。であるならば、2000メートルの滑走路ができたときに、4社の皆さんが中国に行くラインをつくりながら、与那国、台湾、中国という三角交易をつくるということも与那国で模索し始めたい。来年はこのラインを我々がどう対応し展開していくかという位置づけを考えていきたいと思います。
―田里 
ビジョンの中にインターネットの活用がありますが、具体的な活用としましてどんなことを考えていらっしゃいますか
―外間
今年ブロードバンドが入ってきます。実をいうと僕はインターネットは重視していなかったんです。僕もそのへんは熟知していなくて、申込者が殺到しているのでビックリしました。久部良では遊漁船やダイビングなどの誘客に大きな役割を果たしています。与那国の第一次産業はキビと畜産ですよね。しかしキビは実際には1億の産業にはなっていない。水稲も4000~5000万、牛は2億。だいたい漁協の生産高が5000~6000万なので、全体で5億もないわけです。我々は他に何をして生活していくか、数字を求めていかなければなりません。そこで今考えられるのは長命草ですね。月に25トンとれるわけですから、これは高い生産高が期待できます。まだ正確には決まっていませんが、だいたい1?400円で売るとしたら、2億の産業になる可能性があります。また長命草は大変厳しい環境の中でも育つ作物ですから、農地に適さない場所でも作れるという強みがあります。また生産農家がきちっとしていますので、行政が関わらなくても自分たちで生産できるという魅力もあって、行政はどういう形で協力できるかということを模索しているところです。現在、この長命草などから生まれたソバや健康食品、与那国織りなどもそうですが、生産が追いつかない状況です。だからここら辺の生産性の向上に向けたサポートをまずは考えていかなければなりませんね。

やいま編集部

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